第13章 「咲いて、散って、また咲いて**」
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静かになった部屋の中。
窓の外では、虫の声がかすかに聞こえていた。
夜はまだ、明けきっていない。
僕の腕の中で、が小さく寝息を立てている。
目元の赤みは、まだほんのりと残ったまま。
(……可愛すぎ)
さっきまで、何度も僕を呼んで、
泣きそうな声で僕にしがみついてきて――
「……」
そっと名前を呼んでも、返事はない。
安心しきったようなその寝顔が、妙に胸にくる。
『……先生が、したいって思ってくれるなら……』
『……わたしも、ちゃんと向き合いたいです……』
あのときの、震えた声。
潤んだ目。
不安も迷いもあったはずなのに、それでも僕をまっすぐ見つめてくれた。
きっと、怖かったと思う。
でも、それでも――僕を信じて、心を差し出してくれたんだ。
その気持ちが、たまらなく嬉しかった。
(……本当は、全部欲しかったけど)
抱き潰したい衝動がなかったとは言わない。
むしろ、ずっと――
抑えるのがやっとだった。
けど、彼女が震えるたび、躊躇うたび、
頭の奥で何かが叫んでた。
「……大事にしたい」って。
でも、少しやりすぎたかもしれない。
最初は、キスをして。
少し触れ合ったら、今日はもうやめようって思ってた。
ゆっくりでいい。
彼女が、少しずつ慣れていけるように。
焦らず、無理をさせずに。
……そう思ってたはずなのに。
けど、が可愛く鳴くたびに、
その声を聞くたびに、止まれなくなっていった。
もっと見たくなった。
もっと感じさせたくなった。
僕だけの声を、もっと引き出したくて――
……気づけば、入れる一歩手前だった。
初めて、僕の手で達したその瞬間。
胸の奥に、ぐちゃぐちゃになった感情が生まれた。
愛おしさと、興奮と、幸福と、
そして、どうしようもない独占欲。
あのときの顔が、今も焼き付いてる。
僕の手の中で震えて、潤んだ瞳で僕を見上げて――
先生と呼びながら、気持ちよくなってくれたあの瞬間。
声も、体温も、全部。
彼女の中は、確かに僕で満たされてた。
僕だけが、彼女をこんなふうにできる。