第13章 「咲いて、散って、また咲いて**」
抱きしめる腕の力が、ゆっくりと緩んでいく。
先生の手が、背中をなでるように動いた。
少しだけ熱がこもった掌が、わたしをなだめるように撫でてくる。
「……平気?」
小さく囁かれた声に、
ただ、こくんとうなずくしかできなかった。
わたしがうなずくのを見て、
先生は、そっと髪に手を差し入れてきた。
指先が、後ろ髪を優しくすくって――
そのまま、顔を近づけてくる。
「……」
静かに名前を呼ばれたあと、
唇が、ゆっくりと重ねられた。
柔らかくて、温かくて。
深くも強くもないのに、心の奥がふるえる。
唇が離れて、先生の瞳と目が合った瞬間――
気づけば、言葉がこぼれていた。
「……先生、好き……」
それは呟きのようで、
でも、自分でも驚くくらい、はっきりとした声だった。
先生の目が、ほんの一瞬だけ揺れて、
それから、優しく細められる。
「うん。僕も……が、好き」
たったそれだけなのに、
胸がぎゅっと詰まって、何も言えなくなる。
またそっと、唇が重ねられた。
今度はさっきより、すこしだけ長く。
体が沈み込む布団の中で、
先生の体温と、ぬくもりと、気持ちとが、
ひとつになって伝わってくる気がした。
目を閉じて、そのすべてを受け止める。
心も、身体も、優しく包まれたまま――
静かな夜に、そっと溶けていくようだった。