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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第3章 「眠りの底で、目覚める」


翌日の放課後。
誰もいない教室に、時計の針の音だけが響いていた。


は窓際の席で頬杖をつき、ぼんやりと外を眺めていた。
校庭の端、枯れかけた桜の花びらが夕焼けに染まり、血のような朱色をまとって揺れている。


『――おまえは、まだ目覚めていない』
『ようやく、会えた』


夢の女の声が、再び耳の奥で蘇る。
あの深い翠の瞳、氷のような吐息――忘れられない。


(……いったい、何だったの……)


目覚めた直後、無意識に五条の顔を思い浮かべていた自分を思い出す。


(私と先生は、生徒と教師。それ以上でも、それ以下でもない――はずなのに)


声にならない苦笑が、喉の奥でこぼれた。
あの人の「大丈夫」という声が、今いちばん欲しい。
そう思った瞬間、胸が痛むほど熱くなる。


あのあと、一睡もできなかった。


夕暮れの光がカーテンの隙間から差し込み、机に淡い橙を落とす。
まるで温もりをくれるような光に、抗えず瞼が重くなる。


(……寝ちゃ……だめ……)


机に腕を乗せて顔を伏せる。
意識が薄れ、教室の輪郭が溶けていく。








――沈む。


暗闇に引きずり込まれる感覚のまま、は目を開けた。


草原だったはずの場所は変わっていた。
白い花は枯れ、花弁は赤黒く染まり、腐敗した匂いが空気を満たしている。
空は血と墨を混ぜたような色に濁り、風すら息を潜めていた。


(……ここ、昨日見た夢と同じ場所……?)


唇が乾く。声が出ない。


『――戻ってきたか』


耳元で囁く声。


振り返るより早く、首筋を冷たい指がなぞった。
電流のような悪寒が背中を走る。


振り向くと――女がいた。


黒髪は夜の水のように濡れ、翠の瞳が真っ直ぐにを射抜く。
その視線に足がすくむ。
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