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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第3章 「眠りの底で、目覚める」


視界が闇に呑まれた感覚のまま、は跳ねるように目を開けた。


暗い天井。
見慣れた寮の部屋。
なのに、現実に戻ってきたという実感がすぐには湧かなかった。


息が荒い。
胸が痛いほど上下し、脈打つ鼓動が耳の奥で暴れている。


額からこめかみ、首筋にかけて、汗が冷たく伝った。
寝巻きの背中がぐっしょりと濡れて、布が肌に張りついている。


(……あの女の人は……誰なの?)


自分に問いかけた瞬間、背筋に冷たいものが這い上がる。
“ようやく、会えた”――
あの女の声がまだ耳の奥に残っている。


布団をぎゅっと握りしめる。
手が震えているのに気づき、さらに恐怖が増した。


ゆっくりと顔を上げ、窓の方へ視線を向けた。


窓の外は、深い藍色の闇。
街灯のわずかな明かりが差し込むだけで、世界が水底のように静まり返っている。
その静けさが、余計に夢の続きを引きずり出してくる気がした。



「……せん、せい……」



無意識に、声が漏れた。
呼んだ瞬間、自分でも驚く。
どうしてこんなときに、その名前が出てくるのか。


(……先生なら、こんなとき、なんて言ってくれるんだろう)

(“大丈夫だよ”って――何事もなかったみたいに笑ってくれるだろうか)


恐怖で凍りついていたはずなのに、五条の顔を思い浮かべた途端、呼吸が少しだけ楽になる。


(……会いたい)


祈りにも似た言葉が、胸の底からにじみ出る。
寂しさと安堵がまじりあい、どうしようもなく涙が滲んだ。


――会えたなら、もう少しだけ強くなれる気がした。


は布団をぎゅっと握りしめ、闇に溶けるように目を閉じた。
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