第13章 「咲いて、散って、また咲いて**」
顔を上げると、先生が熱を帯びた瞳で、
まっすぐわたしを見つめていた。
鼻先が触れそうな距離。
お互いの呼吸が絡まるたびに、喉が震えた。
「……」
さっきより、深く、火照りを孕んだ彼の低い声。
わたしは、なにも言えなかった。
ただ、先生を見つめ返すことしかできなくて――
すると、先生の腕がゆっくりと伸びてきて、
わたしの背にそっとまわされる。
そのまま、ふわりと引き寄せられて――
「――っ」
わたしの体が、自然と後ろへと傾いた。
布団に、ゆっくりと倒れていく感覚。
頭が枕に触れた瞬間、心臓が跳ねた。
先生が見下ろすように、わたしを見ている。
その蒼が、またわたしの奥をのぞき込む。
「……浴衣、少し緩めるよ」
先生の指先が、胸元の襟にかかる。
わずかな摩擦音とともに、布がずれていく。
夜の空気が、肌の隙間を撫でた。
思わず身体をすくませると、
その肩に、先生の手のひらがそっと添えられた。
「ゆっくり、進めるから」
その声に、かすかに頷く。
でも、心の奥はもう、落ち着かなかった。
襟元がゆるみ、鎖骨から肩へと肌があらわになる。
そこへ、先生の指が触れた。
――触れただけ。
なのに、なぜこんなに、熱いの。
指先が鎖骨をゆっくりなぞり、肩の丸みに沿って滑り落ちていく。
肌の上を這うその軌跡が、じん、と熱を残していった。
唇を噛んでも、呼吸は乱れを隠せなかった。
「……んっ……」
わたしの吐息に、先生の目が細められる。
そのまま指先が、胸元のふくらみに触れた。
布越しに、やさしく――
撫でるように。
それだけなのに、体が反応する。
「っ……」
先生の手のひらが、包み込むように形をなぞる。
指先が、円を描くように動いて――
時折、中心に触れて、また離れる。
そのたびに、息が止まりそうになる。
「せんせ、恥ずかしい……っ」
顔を伏せると、額に唇が触れた。
やさしい、静かなキス。
そのまま、もう片方の手がわたしの腰へと滑っていく。