第13章 「咲いて、散って、また咲いて**」
先生の顔が、少しだけ近づいてくる。
呼吸の音が、重なった気がした。
最初はほんの軽く、唇と唇が重なるだけ。
それだけなのに、心臓がうるさくて、
呼吸の仕方さえ、わからなくなる。
一度、唇が離れる。
けれど、すぐにまた、重ねられた。
今度はさっきより、すこしだけ強く、長く。
先生の息が、かすかにわたしの鼻先にかかる。
それだけで、背筋がぞくっとするほどだった。
頭が、ぼうっとする。
触れられた唇が、じんじんと熱い。
そのまま、先生の唇が、わたしの下唇を軽く挟むようにして吸った。
ちゅっ、と音がして、優しくて甘くて――
でも、すごく濃密な感触。
さらに、先生の舌が、わたしの唇をそっとなぞってくる。
一瞬、びくっと肩が跳ねたけど……
わたしは、意を決して、唇を少しだけ開いた。
舌がそっと、わたしの中に滑り込んでくる。
温かくて、やわらかくて、
口の中でゆっくりと、動いていた。
わたしの舌に、やさしく触れてくる。
まるで誘うように、ゆっくりと擦れて――
絡んできた。
「……っ、ん……」
唇の隙間から、かすかに吐息が漏れる。
舌が、触れて、離れて、また触れて……
全身が、キスだけに集中していく。
胸の鼓動も、呼吸も、すべてが重なっていくようで。
頭の中がとろけて、時間の感覚さえ曖昧になって――
けど、それでも離れたくなかった。
先生の舌が、わたしの中を何度もなぞる。
わたしも、怖さを忘れて、そっと舌を返す。
すると、嬉しそうにまた絡めてきた。
ふたりの唾液が混ざって、
ちゅっ、ちゅぷっ、と小さな音が響く。
恥ずかしいのに、それ以上に気持ちよくて。
舌を絡めるたび、体の奥が熱くなっていく。
唇の奥で、わたしと先生がひとつになっている――
そんな感覚に、全身が包まれていた。
「……っ、は……」
やっとのことで唇が離れたとき、
胸の奥に溜め込んでいた息が、熱を帯びたまま零れた。
唇の間をつたう、濡れた熱。
鼓動が速すぎて、体の奥までじんじんしている。