第12章 「極蓮の魔女」
わたしは、そっと顔を上げる。
視線が合う。
先生の蒼が、わたしの奥をじっと見ていた。
(……違うの。嫌じゃないの)
言葉が、喉元でつかえてしまう。
言おうとするたびに、心臓の音が邪魔をする。
それでも、どうしても――伝えたかった。
「……わたし」
唇が、わずかに動いた。
思考よりも先に、言葉がこぼれた。
「……怖いわけじゃ、ないんです」
小さな声だった。
けれど、その言葉は、確かに“わたしの意志”だった。
先生の目が、ふっと細められる。
わたしは、言葉を探しながら、ぽつりぽつりと続ける。
「私も、先生に触れてほしいって……思ってます」
ぎゅっと、浴衣の裾を握る手に力が入る。
「でも……っ」
そこで、また言葉が詰まった。
目の奥が熱くなって、胸の奥がじんと痺れる。
「……どうしたらいいのか、わかんなくて」
「私……その……こういうこと、何も知らなくて……」
唇が、かすかに震える。
でも、そこに嘘はなかった。
「ネットで調べても、よくわかんなくて……」
言った瞬間、恥ずかしさで顔が熱くなった。
けれど、もう止まれなかった。
「だから……その……」
目を伏せながら、ぎゅっと裾を握ったまま、
言葉を絞り出す。
「……先生が、したいって思ってくれるなら……」
「……わたしも、ちゃんと向き合いたいです……」
言った瞬間、顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。