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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第12章 「極蓮の魔女」


***


脱衣所のカゴの中に、丁寧に畳まれた浴衣が置かれていた。
淡い藤色の浴衣。
刺繍の入った帯まで、すべて揃っている。


浴衣に袖を通すと、さらりとした生地が肌に心地よかった。
鏡の前で、髪をタオルドライしてから、置いてあったドライヤーで丁寧に乾かす。
くしで整えて、深呼吸。


視線を、脱衣所の扉へと向けた。
その前に立つと――
胸が、どくん、とひとつ跳ねた。


(これを開けたら……先生が、待ってる)

(わたし、どんな顔すればいいの……?)

(……っ、だめだ、考えすぎ。こんなとこでウジウジしてても、しょうがない……!)


鼓動の音に背中を押されるようにして、わたしは扉に手をかける。


(……なんとかなれーっ!!)


勢いよく、戸を引いた。

 






 

「あれ……?」

 

部屋には、誰もいなかった。
思わずその場で立ち尽くす。


間接照明の灯る畳の間。
並んだ布団は、さっきと同じように整えられたまま。
でも、そこにいるはずの人の気配だけが、ぽっかりと抜け落ちていた。


(……いない? どこ行ったんだろ……?)


きょろきょろと室内を見渡す。
けれど、先生の姿はどこにもない。


(……先生もお風呂、入りに行ってるのかな)


静まり返った室内に、自分の鼓動だけが微かに響く。


荷物のもとへ戻り、さっきまで着ていた服を畳んで、
旅行バッグの中にしまう。
その動作だけで、なぜか少し落ち着いたような気がした。


けれど――
布団の前に立った瞬間、また胸がざわついた。


(……どうやって、待ってればいいの?)

(布団の中、入っちゃう? 寝て待ってる? それとも、座って……?)

(世の中のカップルって、こういう時どうしてるの……!?)


思わず頭を抱えたくなった。


(……無理。無理すぎる)


顔から火が出そうなほど恥ずかしくて、でも、逃げ場もない。


(こ、こんなときこそ、文明の力!!)
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