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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第12章 「極蓮の魔女」


湯気の向こうに現れたのは、磨き抜かれた檜の浴室だった。


小ぶりながらも、木の香りがふわりと立ちのぼる。
照明は抑えられ、間接光が檜の壁にやわらかく反射していた。


(……旅館みたい……)


思わずそんな言葉が胸をよぎる。


浴槽には、湯が静かに波打っていて――
その音に耳を澄ませるうちに、ようやく緊張がほどけていくのがわかった。


体を洗い流し、そっと湯船へと身を沈める。
肌に当たる湯の温度が、今日一日の心を少しずつほぐしていく。

 
(……今日は、いろんなことがあった)

(五条家の記録、悠蓮のこと……)

 
湯の中に指先を浮かべながら、静かに目を閉じた。


わたしの力のこと――
少しだけ、答えに近づけた気がする。
でも、まだ……まだ、わからないことばかりだ。


指先で、そっとお湯をすくってみる。
手のひらから、やわらかな雫が落ちていく。

 
(……それでも、先生は言ってくれた)

(“一緒に確かめよう”って)

 

その言葉のぬくもりが、胸の奥にそっと灯る。


言葉にしてもらえることが、こんなにも心強いなんて――
思いもよらなかった。

 

ふと、頭の奥にあの言葉が浮かぶ。
 


『僕が、常にに触れたいって思ってることは……
 ちゃんと覚えてて?』

 

(……っ)

 

湯の中で、指先がぴくりと動く。
頬まで届いた熱は、お湯のせいじゃない。


(……あのときの“触れたい”って、どういう……)

(わたしだって……先生と、もう少し――)

(でも……“もう少し”って、どこまで?)

 

触れたいと思う気持ちと、怖さと、まだ見えない距離感。
そのはざまで、わたしの心は揺れていた。
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