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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第12章 「極蓮の魔女」


指先が通り過ぎたところから、
ぽつりと熱が灯ったように、余韻が残って離れない。



「……はい。じゃあ……お言葉に、甘えて……」



わたしはそう言って、少しだけ俯いたまま答えた。


自分の声が、かすかに震えていたのがわかる。
でも、先生は何も言わず、ただ見守るように微笑んでくれていた。


荷物のところまで歩いて、着替えを手に取る。


(落ち着いて……ただ、お風呂に入るだけ……っ)

 
そう自分に言い聞かせながらも、
足取りは妙にぎこちなく、背中にはさっきの言葉の熱がずっと残っていた。

 



部屋の奥、襖の向こうには客間専用の浴室が用意されていた。
戸に手をかけようとした、そのとき。

 

「――ねぇ、」

 

背後から、少しだけ声が近づいてきた気がした。

 

「一緒に入る?」

「なっ……!!?」

 

心臓が跳ねた。
顔から火が出そうなほど熱くなるのが、自分でもわかった。



「――っ、ま、間に合ってますっ!!」 

 

勢いよくそう叫んで、
わたしは戸をばたんと引き閉めた。

 
脱衣籠に着替えを置こうとして、タオルを落としそうになる。
手元が震えてるのが、自分でもわかる。



(……落ち着け、ただの冗談……冗談だから……っ)


戸の向こうからは、先生のくすくす笑う声が聞こえてくる。


(せ、先生、また……面白がってる……!)


笑い声が徐々に遠ざかっていく。
その背中にクッションでも投げつけたい気分だけど――
今は、こっちがそれどころじゃない。
 


「……はぁ……」

 

小さく、ひとつ、息を吐いた。

 

(も、もう……ほんとに……っ)

 

胸の奥に、まださっきの言葉の余韻が残ってる。
触れられた頬も、熱を持ったまま。

 
首を小さく振って、ようやく服に指をかける。
 


タオルを抱えて、そっと扉に近づいた。
そして、ゆっくり戸を開く。
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