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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第12章 「極蓮の魔女」


ぱたん、という音がやけに静かに響いて――
次の瞬間、部屋にはふたりきり。

 
わたしは思わず、きょろきょろと室内を見渡した。


ぴたりと並んだ布団。
あたたかな間接照明。
そして、そのすぐ傍――
すでに置かれている、わたしの旅行バッグ。


混乱する思考の中、先生がふとこちらを振り返る。

 

「ん? どうかした?」

 

その笑顔は、いつもの調子で――
でも、どこかで“確信犯”的な悪戯っぽさを含んでいた。

 

(……ど、どうかしたに決まってるじゃないですか!!)

 

先生は、わたしの様子をじっと見ていたかと思うと――
ふいに、くすっと笑い出した。

 

「……こっちまで緊張してくるじゃん。
 顔、真っ赤だよ?」

「だ、だって、これは……っ」

 

うまく言葉が出てこない。
喉が詰まって、言い訳にならない音ばかりが溢れてくる。


そんなわたしを見て、先生はふっと微笑んだ。

 

「……大丈夫だよ、」

 

低く、穏やかな声。
さっきまでの冗談めいた調子とは打って変わって――
その目には、確かな熱が灯っていた。

 

「無理させるつもりは、ない。
 嫌がることも、絶対にしない。……約束するよ」

 

そう言って、先生はそっとわたしの頬に触れる。
指先はやさしくて、ぬくもりだけが静かに伝わってくる。

 

「でも――」

 

一拍おいて、目の奥に冗談では済まない光が揺れる。

 

「僕が、常にに触れたいって思ってることは……
 ちゃんと覚えてて?」

 

その言葉が、胸の奥に落ちた瞬間――
熱いものがこみ上げてきて、呼吸が止まりそうになる。


視線を逸らすこともできず、わたしはただ、呆然と見つめていた。

 
(そんなの……そんなの……)

(こんなの、意識するなってほうが無理……)


頭のどこかで、冷静な自分が言葉の意味を反芻してるのに、
心臓はもう、とっくに制御不能だった。


すると、先生はふいに肩の力を抜いて、いつもの調子に戻る。

 

「疲れたでしょ? お風呂入ってきなよ」



そう言って、やさしく私の髪を撫でる。
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