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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第12章 「極蓮の魔女」


でも、それはただの植物の記述だったり、
当時の風流を綴った詩に過ぎなかったりすることが多く――


(違う……これも違う)


何度も心の中で打ち消しながら、必死に言葉を拾っていく。


時間だけが、静かに過ぎていった。


窓のない書庫の空間。
しんとした静寂のなか、紙をめくる音だけが、時折耳に触れる。


(……集中しないと)


そう思っても、視線が少しずつ滲んでいくのがわかる。
目が疲れて、文字が霞む。
肩や首がじんわりと重くなり、指先もわずかに痺れていた。


(どのくらい……経ったんだろう)


ふと時計に目をやると、もう四時間以上が経過していた。
驚くと同時に、思っていた以上に身体が疲れていることに気づく。



「……ふぅ」



小さく息を吐き、私は手を止めた。


重ねてきた巻物の端に指を添えながら、
わたしは静かに目を閉じる。


(まだ、何も見つかってない……)


焦りが、少しずつ心を締め付けてくる。



「……、疲れたら言ってね?」



その声に、私はそっと顔を上げた。


書架の向こう、椅子にもたれている先生がこちらを見ていた。
手には開きかけの巻物。
サングラスを外し、眉間に指をあててマッサージしている。



「大丈夫です」



そう答える声が、思っていたよりも硬かった。
けれど、気づかれないように少しだけ笑ってみせる。


先生は、私の表情を確かめるようにしばらく視線を向けたまま、
巻物を閉じて、テーブルにそっと置く。



「わかってたけど。――そう簡単には、見つからないよね」




私は小さく首を振る。



「……でも、きっとここに何かある……そんな気がするんです」



自分に言い聞かせるような言葉だった。


そうでなければ、この場所に来た意味がなくなってしまう。
あの夢も、悠蓮の記憶も、今の私の力も――
全部、どこかで繋がっている気がするのに。


先生は、そんな私を見てふっと笑った。



「そうだね」



そして、椅子からすっと立ち上がると――



「……ま、とりあえず休憩!」



そう言って、先生はそのまま私の隣に腰を下ろした。
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