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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第12章 「極蓮の魔女」


「それは午後。午前中は、スイーツ!!」

「…………」



(……何しに来たんだ?)


もう、突っ込む気力すら湧かない。
でも――


せっかくの京都。
どうせなら、わたしも何か“行きたい場所”を言ってみても
いいんじゃないだろうか。


(……だって、ふたりで来たんだし……)


思い切って口を開く。



「……じゃあ、わたしも……」



広げられた地図に視線を落とした。
ページいっぱいに並ぶ甘い誘惑の中で、その文字の上に指を置く。



「このみたらし団子のお店……行きたいです」

「おっ」



ぱあっと顔を明るくする先生。



「いいね! ここ老舗なんだよね!」

「じゃ、午前中は、“パフェとみたらし団子”ってことで」

「……こんな満喫していいんでしょうか」

「いやいや、。
 心とお腹を満たしてこその呪術師でしょ?」

「そうなんですか?」

「え、言ってなかった? “腹が減っては呪力も出ぬ”」

「呪力は負のエネルギーだから関係ないんじゃ……」



そう返しながらも、自然と笑っていた。


先生も同じように笑っていて、
笑い声が、京都の朝の空気に溶けていく。


私はふと、自分の手を見下ろす。
繋がれた手は、すっかり自然になっていて、
そのぬくもりが、なんだか心地よかった。


任務はしばし忘れて。
ふたりで過ごす“初めての時間”に、胸がふわりと躍る。



「ほら、行くよ」



手を引くように歩き出す先生の背中が、
朝の光に浮かんで、どこか眩しく見えた。


私は小さく息を吸って、その手を握り直す。


そうして踏み出した一歩が、
少しだけ、世界の色を変えたような気がした。
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