第12章 「極蓮の魔女」
新幹線は、時間通りに京都へ到着した。
改札を出ると、やわらかな日差しがすぐに肌に触れる。
どこか懐かしいような、静かな街の香り。
見上げれば、駅の外に連なる瓦屋根の街並み。
遠くに小さな山々の稜線が見える。
「……なんか、東京とは空気が違いますね」
「そう? あんまり意識してなかったけど、そうかもね」
そう言いながら、先生は首を傾げて笑う。
私は周囲を見回しながら、少しだけ歩調を緩めた。
「……先生のご実家って、ここから遠いんですか?」
先生は「そうだね」と少し考えるような素振りをして――
ポケットから何故か折りたたまれた紙を取り出した。
「はいっ!」
ばさりと広げられた紙に、目を丸くする。
目の前の地図には、チーズケーキ、プリン、わらび餅、アイスクリーム……
やたらにキラキラしたマークと、テンション高めのコメントが添えられていた。
《ここのミルフィーユは神》
《夏限定!幻の抹茶パフェ(整理券必須)》
《僕の推しプリン》
「……え? これなんですか?」
「おいおいー、おいおいおいおいおい」
「えっ、え、えっ?」
「五条悟スイーツマップに決まってるでしょ?」
「……はい?」
思わず声が裏返る。
「せ、先生……これ、まさか全部、今日行く予定……?」
「うん、ってか、今日はほぼ“スイーツ巡り”だからねぇ」
さらっとそう言い切った彼に、わたしはしばらく言葉を失った。
「……あの、悠蓮のこと、調べに来たんじゃ……」
恐る恐る問うと、先生は悪びれた様子もなく首を傾げた。