第10章 「花は焔に、焔は星に」
最初は、ほんの一瞬だけ。
迷いが入り混じるような、確かめるような、かすかな接触。
けれど、が瞼を閉じ、そっと身を預けた瞬間――
彼の動きが変わった。
唇が深く重なり合い、
互いの吐息が静かに混ざっていく。
の背に回された五条の腕が、じわりと力を込めた。
それに応えるように、の指先が彼の胸元をぎゅっと掴む。
唇が、形を探るように擦れ合う。
五条の舌が、ゆっくりとの唇を撫で、隙間を探す。
そして、ゆっくりと――
舌が、唇の隙間から滑り込み、の舌に触れた。
がわずかに息を呑むと、
その隙に彼の舌が滑り込んでくる。
ぬるりとした湿度。
舌先が絡み合うたびに、身体の奥が熱を帯びていく。
「……んっ」
思わず漏れた小さな吐息。
それを聞いた瞬間、五条の動きがわずかに熱を増した。
舌が、絡んで、探って、吸い上げる。
唇が、擦れて、啄んで、離れて、また重なる。
頬が火照り、指先が震える。
の胸の奥が、焦がされるように熱くなっていく。
腰のあたりにまわされた五条の手が、そっと背を撫でる。
その動きひとつで、の身体がびくんと揺れた。
息が詰まりそうなほどの熱。
心も、身体も、五条に溶かされていく。
やがて、舌先が名残惜しげに離れていく。
唇だけが、そっと、柔らかく触れ合う。
それは、余韻を刻むような――
長く、静かで、深い口づけだった。
まるで、心の奥まで刻み込むように。
唇が離れたあとも、二人の額は触れ合ったまま。
「……」
低く、熱を帯びた声で五条が囁いた。
五条の指先が、そっと頬から髪を撫で、首筋へと滑っていった。
「……もっと、したい」
「――えっ……!?」
の身体がびくりと跳ねる。
次の瞬間、顔が真っ赤に染まった。