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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第10章 「花は焔に、焔は星に」


「僕を……止めてくれて、ありがとう」

「――え?」



思わず聞き返すと、五条はふっと笑って、目をそらした。



「はは、いいの。……わかんなくて」



は、きょとんとしたまま五条を見上げる。


けれど次の瞬間、五条はぱっとこちらを向き直ると、いつもの調子に戻っていた。



「……って、そうじゃなくてっ!」



突然、の肩を掴み、目を見開いてぐっと距離を詰める。



「! もっと大事なことあるでしょ!」

「えっ……な、なんですか!?」



わけもわからず目を瞬かせるに、五条は真剣な顔で、すうっと息を吸い込んだ。



「……あの夜のキスのことだよ」

「っ――」



の顔が一気に真っ赤になる。



「き、キス……って……」



五条はどこか芝居がかった口調で続けた。



「僕ね、初めてだよ? あんな濃厚なキスして――次の日にはトンズラされるなんてさ」

「っ……!!」

「いやぁ、ショックだったなぁ……ひどいよねぇ、……」



そう言いながら、五条はわざとらしく目元を拭う仕草をした。



「……はぁ、やり逃げされたかと思うと、夜も眠れず……」

「なっ――や、やり逃げなんて、そんなっ!!」



が真っ赤な顔で慌てて声を上げる。
手をぶんぶん振りながら、必死に否定するその姿に、五条はさらに肩を震わせて泣き真似を続けた。



「……僕のピュアなハートが……粉々に……」

「ち、ちがいます! そういうのじゃなくて……!!」



はもう顔まで耳まで真っ赤で、うまく言葉が出てこない。



「自分なりに……気持ちに踏ん切りつけようと思って……っ」



五条はその顔を見て、くすっと笑った。



「ふーん……踏ん切りねぇ」



そして、いたずらっぽく目を細める。



「……ついたの?」



その問いに、は一瞬だけ目を伏せる。


目の奥がじわりと滲む。
言葉にしようとするたび、胸の奥が苦しくなった。
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