第10章 「花は焔に、焔は星に」
『あなた、こういう不思議な体験……今までにもあった?』
そう硝子が尋ねたのは、あの夜,子供を助けたときだった。
『はっきりとは覚えてないけど……昔、火事の時に……
私の周りだけ、燃えてなくて……』
ぽつりと呟いた自分の声が、まるで昨日のことのように甦る。
「……! 学校で、火事があった時の……」
は現実に戻りながら、小さく口を開いた。
五条は、にっと笑って指を立てた。
「そっ、それ!」
「硝子がちゃんと記録に残してくれてて助かったよ。ほんと感謝感激」
「で、僕、閃いちゃったんだよね。、火炙りにしても燃えないんじゃないかって」
「……そ、それだけで?」
呆れ混じりの声に、五条は肩を竦めてあっけらかんと続ける。
「いやいや、もちろん半信半疑だったよ? あの時みたいにまた守ってくれる保証なんてなかったしさ〜」
Vサインを作って、明るく笑う。
「、黒焦げにならなくてよかった。いぇーい☆」
その無責任なテンションに、は力が抜けたように苦笑した。
「はは……」
(……もう、なんなんですか……この人……)
その時だった。
「五条……説明しろッ!」
怒声のような声が、場の静寂を破った。
処刑台の下から、楽巌寺が鋭く五条を睨みつける。
五条は視線だけをそちらへ向ける。
「……おそらく、悠蓮の魔導がを守ったんだろうね」
「……やはり……異端の魂……この世に存在してはならぬ」
楽巌寺が吐き捨てるように言い放つ。
「ならば――別の方法で、処刑を執行するまでだ」
その言葉に、五条はふっと鼻で笑った。
そして静かに、だが鋭く告げる。
「……まだ気づかないの? おじいちゃん」
「なに?」
五条はゆっくりと、処刑台の階段を降りながら語り出す。
「禁術系譜書には、悠蓮は“火炙り”で処刑されたとわざわざ記されてる」
「……僕、ずっと引っかかってたんだよね」
「悠蓮のいた時代を考えても、火炙りなんて、そうそう選ばれる方法じゃない。なのに、なぜか?」
その問いに、処刑台の下から、楽巌寺が答えた。