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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第10章 「花は焔に、焔は星に」


は、無言のまま連行され、廊下を歩いた。


鉄の扉が、背後で閉まる。
その音に、もう振り返る意味はなかった。


小さな部屋に通され、畳の上に白い和服が畳まれていた。




「……着替えろ」



低い声を背に、は静かに衣服を脱いでいく。
袖を通すたび、肌に冷たい布の感触が広がっていく。


帯を結び終えると、襖の向こうの男が再び歩き出す。
は、何も言わずにその背中に従った。


廊下を進み、階段を上り、最後の扉の前で足が止まる。


カチリ、と鍵の音。
ギィ、と重い金属の音。



そして――



目の奥に光が突き刺さる。


外の光。


その眩しさに反射的に顔を背けた。


光に目が慣れるまで、ほんの数秒。
その間に、足元の感覚だけが現実を引き戻してくる。
砂利のこすれる音。肌に触れる、微かに冷たい外気。


視界が、ゆっくりと輪郭を取り戻していく。


まず目に飛び込んできたのは、中央に据えられた柱だった。
台座に組まれた金属の枠、その周囲には鎖が垂れ下がっている。


視線をずらす。
周囲に、数人の男たちの姿。
年配の者が多く、誰もが無表情にそこに立っていた。


(……あの人たちが、上層部なのかな……)


誰かの名前を知っているわけでもない。
けれど、顔つきと、その“立っている場所”がすべてを語っていた。


さらに後方には、見覚えのある姿がちらほらと見える。


夜蛾学長。
それから、硝子さん。
伊地知さんも、少し離れたところに。


誰もが、声を発さない。
ただ、静かにこちらを見ていた。


(……先生は)


いない。
どこにも、その白い髪も、蒼い目も。


(……そっか)


は、ふと視線を落とした。
ほんの少しだけ、肩の力が抜ける。


(いないんだ)


ほっとしたような――
少し、残念なような。


どうしようもない思いが胸の奥に滲んできて、



「……こんな時まで、会いたいとか……」



小さく、自嘲するように口が動いた。


そして、誰にも聞こえないくらいの声で、苦笑した。



「……進め」



誰かの声がした。
それを合図に、背後から男たちが近づいてくる。
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