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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第10章 「花は焔に、焔は星に」


「――“先生に、なんでも背負わせたくない”って」

「“一人にさせたくない”って――は、そう言ってました」



伏黒は、静かに言葉を置いた。



「は……本当は言わなかったけど」

「たぶん、先生が何か“取り返しのつかないこと”をしようとしてるの、わかってたんだと思います」



その一言に、五条の眼が、かすかに揺らぐ。



「もし、先生がその手で誰かを殺して……
それでが助かったとして――本当に、それで、彼女は喜びますか?」



伏黒は、目を逸らさずに続けた。



「それでも先生が行くなら、止めません。でも、覚えててください」



その目は、揺らがない。



「俺たちは、ただ“生きてさえいればいい”なんて、そんな救われ方をしたくない」



それは、彼自身の願いでもあった。
ただ生かされるだけじゃない。
意味のある形で生きること。戦うこと。選び取ること。



「……も、きっとそうです」

「一人で先に行かないでください。……俺を、を、あんたの“背中”も見えない場所に、置いてかないでください!」



沈黙が落ちた。
夜の静寂の中、じっと伏黒の言葉を反芻する。


掌に残る、誰かを殺めようとしていた“温度”。
それを、少年のまっすぐな声が、静かに冷ましていく。

ゆっくりと視線を落とす。


(……あの時、僕も傑にこう言えてたら……)


皮肉にも、今、自分が“言われる側”だという現実に苦笑が漏れそうになる。
けれど、それを飲み込んで、五条は片手をポケットに突っ込んだ。



「……いやぁ、まいったね」



伏黒に近づき、その頭にぽんと手を置いた。



「さすが、僕の生徒たちだ」



その声は冗談めいていたが、眼差しには確かな誇りと――
わずかな安堵が宿っていた。



「わかったよ。上は……殺さない。約束する」



伏黒が目を見開く。



「先生……」



伏黒が呟いた、その直後だった。
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