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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第10章 「花は焔に、焔は星に」


「……怖いか?」



すると彼女は、少しだけ目を伏せて、それでもはっきりとした声で言った。



「……怖いよ。でもね、五条先生が言ってくれたの」



そう言って、今度は俺の目を見て、静かに続ける。



「“面白い力だね”って」



……あの人なら言いそうだ、と思った。



「……あの人の言うことは、あんまり真に受けない方がいいぞ」



俺が眉をひそめながらそう返すと、彼女はふっと笑った。



「この前なんてさ、僕の術式を真っ向から受けたら力が発動するんじゃないかって……本気で言うから、どうしようかと思った」

「――あの人、やることなんでも規格外なんだよ」



その言葉には「確かに」と吹き出し、つい俺も笑ってしまう。
思えば、あの空気はなんとなく居心地がよかった。


しばらく沈黙があって、それから彼女が、ぽつりと漏らした。



「……私ね、査問会でちゃんと自分で証明したいんだ」



その横顔を、俺は黙って見つめる。



「本当は……私が頑張らなくても、きっと守ってくれると思う」



言葉を選ぶように、彼女は唇を噛んだ。



「でも――私、それが嫌なの。先生に、なんでも背負わせたくない」

「先生を……一人にさせたくないから」



その言葉に、思わず口をついた。



「……あの人、一人か?」



は少しだけ目を伏せて、ゆっくりと言った。



「先生は、いつも私たちよりずっと前を歩いてて……
背中しか見えないくらい、遠いところにいて」



その声には、確信のような静けさがあった。



「……きっと、ずっと一人だったんじゃないかって」


「私だって……戦いたい。ちゃんと、意味のある形で、生き残りたい」

「それで、少しでも先生に追いつきたいなって」



その時の彼女の声は、小さくてもまっすぐだった。



「……って言っても、今は守られてばっかりなんだけどね」



そう照れたように笑った顔が、月の光に照らされていた。


その笑みの奥には――
悔しさと、誇りと、ほんの少しの覚悟が、きっと折りたたまれていたんだと思う。





俺は、その笑顔を忘れられなかった。
あの夜、彼女が見せた“ほんの少しの覚悟”が、ずっと胸に残っていた。


だからこそ、いま――
この言葉は、俺の中から自然とこぼれた。
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