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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第10章 「花は焔に、焔は星に」


***


五条は、廊下の奥へと足を運ぶ。
鋭く靴音が鳴るたび、胸の奥の何かが冷たく軋んだ。



――殺す。



そう言い切った自分の声が、まだ耳に焼きついている。


(……もう、それしか方法はないのか)


助ける方法を探して。
守る術を模索して。


でも。
もう、そんな悠長な夢は終わった。


今ここにあるのは――
誰かを救うために、誰かを殺すという現実だけ。


唇を噛み、拳を強く握った。


ふと、脳裏に浮かんだのは――傑の顔だった。
あの日、かつての親友が選んだ道。



「術師だけの世界を作る」



“弱者”を淘汰するという大義のために。
傑は非術師を殺し続けた。


(……じゃあ、僕は?)


傑の言い分を否定し、断罪したこの手で――
今、自分もまた、“正しさ”を叫んで人を殺そうとしている。


(……はどう思うんだろうな)


その瞳が、自分を見て、怯えるだろうか。
失望するだろうか。
それとも――拒絶するだろうか。


(……それでも構わない。たとえ、嫌われても)


彼女の心に、僕という存在が傷を残すことになっても。
それでも守りたい。
それでも、生きていてほしい。


――この道の先に、罰が待っていようと。







「先生ーっ!」



そのとき、廊下の奥から誰かが叫ぶ声がした。

反射的に顔を上げると、虎杖たちがこちらに向かって走ってきていた。



「が処刑されるって――本当なんすか!?」



駆け寄るなり、虎杖が息を切らしながら問い詰めてくる。
その瞳は、信じたくないと叫んでいた。



「なんとかなんねーの?先生」



その声に、釘崎も続く。



「“最強”なんでしょ? 本気で、見殺しにする気なの?」



真っ直ぐな眼差し。
誰かを救いたいと叫ぶ、真っ当な怒りと祈り。


五条は小さく息を吐き、ふっと笑みを浮かべた。



「……僕がを見殺しにするわけないでしょ」



いつもの軽い口調で、余裕めいて言ってみせる。



「だーいじょうぶ。僕がなんとかするからさ」



そして、近くに立っていた虎杖の頭にぽんと手を置いた。



「帰った帰った。君たち、明日任務でしょ?」

「……でも、俺たち……」



虎杖が食い下がろうとする。
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