第2章 「はじまりの目と、最強の教師」
自分の説明があまりに幼稚で、不安になる。
私は、縋るような思いで先生を見つめると、先生は深く頷き、ポンッと手を叩いた。
「ふーん……なるほど、そういうことね」
(え、今のでわかったの……?)
私だけでなく、教室中の視線が先生に集まる。
「……わかったんですか?」
代表するように、伏黒くんが鋭い視線を先生に向けて問いかけた。
「いーや、全然!」
あっけらかんとした、清々しいほどの即答。
ガクッと、みんなが一斉に肩を落とした。
虎杖くんが「わかんねぇのかよ!」と叫び、釘崎さんが「さっきの“なるほどね”は何だったのよ」と呆れている。
伏黒くんは小さくため息をつき、机に視線を落としていた。
「あ、後でここの掃除、みんなでやっといてね~」
「えぇ!? 先生がやったんだろ!」
「自分で片付けなさいよ、この不良教師!」
虎杖くんと釘崎さんが、すかさず声を荒らげる。
わあわあと騒がしくなる教室。
その喧騒の中で先生は立ち上がりざまに、私の頭を軽く叩いて――
「大丈夫、僕がついてる」
私にしか聞こえないような、小さな声。
(えっ……)
頭に残る、大きな手の感触。
そして、その言葉。
顔にぶわっと熱が集まるのがわかった。
(ついてる、って……?)
さっきまでおちゃらけていた人とは、まるで違う響きだった。
すぐ耳元で落とされた低い声が、頭から離れない。
触れられた場所が、じわじわと熱を帯びていく。
先生は、私を安心させようとしてくれただけなのに。
でも、なんだか変だ。
(どうしよう、心臓がうるさい……)
自分の得体の知れない力への戸惑いよりも。
今はただ、その部分の熱に意識が持っていかれてしまう。
「はい、授業再開ねー。さっきの呪符の構造の続きから」
先生は何事もなかったかのように新しいチョークを手に取ると、授業を再開した。
私は、そっと自分の頭に手を重ねた。
まだ残っている熱を、確かめるように。
(……五条先生が触れたところ、まだ熱く感じる。どうして……?)
さっきまで私を縛りつけていた、自分の未知なる力への不安。
それが今は、不思議なくらい静かになっていた。
黒板に向かう大きな背中を見つめながら。
私の心には、新しい疑問が静かに芽生えていた。