第2章 「はじまりの目と、最強の教師」
「……触れようとした“何か”が壊したのか」
そう小さく呟き五条はに歩み寄り、しゃがんで目線を合わせる。
「、当たる瞬間……何か感じた?」
「……なんか、体の内側から、一気に何かが駆け抜けるような……」
言葉を探しながら答える。
あの時――初めて呪霊を祓った時と、同じ感覚だった。
五条は小さく頷き、口元を緩めた。
「ふーん……なるほどね」
「……何かわかったんですか?」
伏黒が静かに口を開く。鋭い視線が五条に向けられていた。
「いーや、全然」
五条があっけらかんとした声でそう答えると、
虎杖が「わかんないんかい」と突っ込み、釘崎も「さっきの”なるほどね”はなんだったのよ?」と呆れたようにぼやく。
伏黒は小さくため息をつき、机に視線を落とした。
「あ、後でここの掃除、みんなでやっといてね〜」
そして、五条は立ち上がりざまにの頭を軽くポンと叩き、だけに届く声でささやいた。
「大丈夫、僕がついてる」
は驚いて目を瞬かせる。頭に残るその手の感触と、五条の言葉に、思わず頬が熱くなった。
何事もなかったかのように、五条は新しいチョークを取り出した。
「はい、授業再開ねー。さっきの呪符の構造の続きから」
は、そっと自分の頭に手を重ねた。まだ残っている、さっきの手の感触を確かめるように。
(五条先生が触れたところ、まだ熱く感じる。どうして……?)
さっきまで胸を締めつけていた自分の力への不安が、不思議と影を潜めていることに気づく。
黒板に向かう背中を見つめながら、の胸には新しい疑問が静かに芽生えていた。