第2章 「はじまりの目と、最強の教師」
自己紹介も終わり、にとって呪術高専での初めての授業が始まった。
静まり返った教室に、チョークが黒板を滑る音が響いていた。
「これが呪符の構造ねー。ま、覚えなくてもどうにかなるけど」
五条はそう言いながらも、黒板に描かれる記号は複雑で、には見慣れないものばかりだ。
眉を寄せ、なんとか必死についていこうとする。
その手を止めた彼が、ふと後ろを振り返る。
「、集中してる?」
「……はい?」
その返事と同時に、五条の手元のチョークが、彼の指先から放たれた。
(え――)
の目が大きく見開かれる。
白い軌道が一直線に自分の方へ――まるで狙い澄ましたように迫ってくる。
(当たるっ!)
反射的にぎゅっと目をつぶった。
その瞬間――胸の奥から、熱のようなものが立ち昇っていく。
それは手足の先まで一気に広がり、肌の内側をぞわりと駆け抜けた。
次の瞬間、チョークは音もなく砕け散った。
白い破片が宙に舞い、光を反射してきらりと瞬く。
(……え?)
恐る恐る目を開ける。目の前には砕けたチョークの欠片が散らばり、静まり返る教室。
何が起きたのか、まったくわからない。
「え! 今の何!? がやったのか?」
最初に声を上げたのは虎杖だった。半分立ち上がり、目を丸くしてを見ている。
「……今の、どういうこと?」
釘崎が眉をひそめて呟く。
伏黒は黙ったまま、じっとを見ている。
は自分でも何がなんだかわからず、無意識に両手を握りしめていた。
「ごめんごめん、当てる気はなかったから安心して」
五条が軽い声で笑う。だがその目隠しの奥は、まるで何かを見極めるように鋭く細められていた。