第2章 「はじまりの目と、最強の教師」
自己紹介も終わり、呪術高専での初めての授業が始まった。
「これが呪符の構造ねー。ま、覚えなくてもどうにかなるけど」
そう言う五条先生の背中を見つめながら、私はノートにペンを走らせる。
黒板に描かれる記号は複雑で、見慣れないものばかりだった。
(全然、頭に入ってこない……)
必死に理解しようと、黒板に書かれた文字を凝視する。
その時。
ふと、チョークの音が止まり、振り返った先生と目が合った。
「、集中してる?」
「……はい?」
間抜けな声が出たのと、同時だった。
先生の指先から、チョークが弾かれた。
(え――)
真っ白な軌道が、一直線に私に向かってくる。
まるで狙い澄ましたように。
(当たるっ!)
思わずきつくまぶたを閉じた、その瞬間。
お腹の底から、熱い塊のようなものが立ち昇った。
それは手足の先まで一気に広がり、肌の内側をぞわりと駆け抜けていく。
パチン、と。
何か弾けるような音がして。
(……え?)
恐る恐る目を開けると、目の前には白い破片が宙を舞っていた。
粉々になったチョークが、光を反射してきらきらと瞬きながら落ちていく。
何が起きたのかまったくわからなかった。
「え! 今の何!? がやったのか?」
虎杖くんが、半分立ち上がりながら叫ぶ。
「……呪力、感じなかったわ」
釘崎さんも戸惑ったように呟いた。
伏黒くんは黙ったまま、じっと私を見ている。
(私が、やった……?)
自分でも状況が呑み込めず、ただ震える両手をぎゅっと握りしめた。
「めんご、当てる気はなかったから安心して」
五条先生が笑いながら、両手を合わせた。
けれど、目隠しの奥の視線は、まるで何かを見極めるように鋭い気がした。
先生は私に歩み寄ると、しゃがみ込んで目線を合わせた。
「、今……何か感じた?」
(……あの時と、同じだ)
初めて呪霊を祓った時、身体の奥を駆け抜けたあの感覚。
それを思い出しながら、私は手探りで言葉を探した。
「……なんか、体の内側から、一気に何かが駆け抜けるような……」
だめだ、うまく言えない。
これじゃ、五条先生にこの感覚が正しく伝わっているかどうかわかんない。