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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第9章 「あなたの知らないさよなら」


目元にはもう笑みはない。
だが、その代わりに浮かんだのは、どこか吹っ切れたような色だった。



「……だとしたら、何?」



静かに、しかし明確な意思を込めた声。



「私は、“選択肢”を与えただけ。――選んだのは、あの子の方よ」



言い訳でも、開き直りでもない。
むしろ、それが“正義”だと言わんばかりの視線だった。



「……何でそんなことした?」



五条の声に、ほんの僅か、痛みが滲む。



「何でって――」



深雪はふっと息を吐き、空を見上げるように目を細めた。



「私は、五条家を……“悟”を守りたかっただけだよ」



その言葉に――
五条は、しばらく黙っていた。
やがて、ゆっくりと息を吐き、短く呟く。



「……は?」



声には、乾いた苛立ちが滲んでいた。



「僕、深雪に守られるほど弱くないし。勝手なことすんなよ」



その言葉に、深雪は言葉を失う。
ただ、小さく目を伏せたまま、何も返さない。


五条は面倒臭そうに片手で頭をかく。



「いいから、早く教えろ。……深雪の親、脅して聞き出すぞ」



冗談のようで、冗談ではない声だった。


その時、深雪の瞳が揺れる。



「……どうして?」



低く、かすれた声。



「このまま逃げ続けた方が、あの子だって幸せに暮らせる。呪術界の不条理な道理や伝統に関わらなくて済むんだよ」

「悟も……手を汚さなくて済むのに」



叫ぶでも、責めるでもなく――
ただ、必死に何かを説得するように。


だが。



「知ってるよ、そんなこと。……それでも」



五条は、静かに言った。



「僕は――と、離れたくない」



その声には、静かな決意があった。
後悔も、怒りも――すべて抱えたまま、それでももう一度向き合おうとする覚悟。


サングラスの奥で、青い瞳がわずかに揺れる。
唇を引き結び、痛みを滲ませながらも、譲れない想いを隠しきれなかった。


深雪は、息をのんだ。
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