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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第8章 「この夜だけは、嘘をついて」



(……え? え? なにこれ、これってもしかして――)

(告白のチャンスってやつ?)


背中で聞こえるの足音。
静かにソファへと歩み寄る音が、やけに耳に残る。



「砂糖とミルクいる?」

「……あ、じゃあミルクだけ」

「オッケー。僕は砂糖たっぷり~」



そう軽く返しながら、カップを手に戻る。


がこんなふうに夜中に“声が聞きたくて”来るなんて、今日が最初で、もしかしたら最後かもしれない。


……だったら。


(今言わなきゃ、いつ言うの?)


――って、どこの受験対策の塾講師だよ僕は。


五条はカップを渡しながら、わざと軽く眉を上げてみせた。



「ほい、お待ちどう。五条悟特製ミルクティー」



は小さく「ありがとうございます」と呟き、両手で丁寧に受け取る。
ほんの数秒、カップを見つめたまま動かない。


(……ん?)


不意に感じる空気の緊張に、五条も表情を少し引き締めた。


そして、がゆっくりと視線を上げた。



「……何かあった?」



そう訊いた瞬間――


は小さく息を吐いて、紅茶をそっとテーブルに置く。
その仕草には、どこか“覚悟”のようなものがあった。


次の言葉が来るまで、わずかに間が空いた。



「……あの時の続き、してくれませんか?」



一瞬、時が止まったような錯覚。



「……続き?」



はもう逃げないというふうに、まっすぐこちらを見つめて言った。



「……キス。もう一回したいって……先生、言ってましたよね?」



真正面からぶつけてきたその言葉に、
僕の中に張りつめていた“余裕”の皮が、音もなく剥がれ落ちていくのがわかった。


それでも、ぎりぎりの理性が口を動かす。



「……どうしたの? この前は“好きな人同士じゃないとやだ”って、言ってたのに」



は少し俯きながらも、すぐに顔を上げて言った。



「……キス、してほしいんです」



小さな声。でも、はっきりしていた。
その目が、僕をまっすぐに射抜いていた。
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