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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第8章 「この夜だけは、嘘をついて」


心の中で、小さく呟く。


“言葉にしろ”って言ってたけど――
この目を見て、それでも言葉がいるって思う?


だって、
目の前でがこんな顔をして、
こんな声で、僕を求めてくれてる。


(……ちゃんと、伝わってる)


言葉なんて、いらない。
僕たちは、ちゃんと通じ合ってる。


そっと手を伸ばして、彼女の頬に触れる。



「」



名前を呼ぶ声は、想像よりずっと低くて、やけに真っ直ぐだった。


彼女が、目を閉じる。
僕は、そっと身体を寄せた。


そして、唇を重ねる。


最初は、触れるだけ。
まるで頬に触れる風みたいに。
それでも、唇が重なった瞬間、胸の奥で何かがゆっくりと溶けていくのを感じた。


……これだけで、十分なくらいだった。


けれど――の唇が、ほんのわずかに動いた。



「……っ」



逃げたんじゃない。
受け入れたのだと、すぐにわかった。


たまらなくなって、角度を変える。
もう一度、唇を重ねた。
今度は、少しだけ強く、深く。


の肩がわずかに震えた。
戸惑いと緊張が、肌越しに伝わってくる。
でも、拒まれていない。


その初々しさが、また堪らなかった。



「……っ、ん……ぅ……」



唇が触れ合うたび、の喉奥から小さな声が洩れる。
その震えが、僕の中の抑制をじわじわと溶かしていく。


腕を伸ばし、彼女の手を引き寄せる。
軽く腰に回した腕に、の体温がすっと沈んでくる。
薄く震える吐息ごと、胸の中に閉じ込めた。


キスを重ねるたびに、の身体が少しずつ力を抜いていくのがわかる。
唇の動きもぎこちないながら、次第に僕に馴染んでくる。



「……続けていい?」



低く囁くと、がほんのわずかに頷いた。
頬が火照っていて、目尻が少し潤んでいる。


……慣れてないのが、わかる。
唇の重なり方も、身体の反応も――全部、ぎこちなくて。


(……たぶん、キスしたのも僕が初めて、ってことだよね)


その事実に、妙な優越感と、
得体の知れない独占欲が、心をじわりと満たしていく。


僕だけが知っている顔。
僕だけが奪った反応。


……だからこそ、優しくしたいはずなのに。
この不慣れな反応が、余計に火をつけてくる。
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