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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第8章 「この夜だけは、嘘をついて」


行けば、助かる。生き延びられる。
でも、その瞬間に、もう二度と――あの人の隣には戻れない。


(先生の声……もう、聞けなくなる)

……いや。
……そんなの、やだ。


(名前、呼んでもらえなくなる)

呼んでほしい。
何度でも――あの声で。
……、って。


(あの目に、もう映らなくなる)

……見てほしい。

私、ちゃんと頑張るから……
先生の隣にいたいって――思ってるから……
……お願い、忘れないで……


膝の上の指に、ぐっと力が入る。
爪が食い込んでも、痛いと思えない。
心の中で、何かがぶつかって、引き裂かれそうだった。


(逃げたら、みんなのところに戻れない)

(でも、残ったら――先生を、もっと苦しめるかもしれない)


――どちらを殺すか、選べと言われている。


(どっちも、捨てたくないのに……)

(誰か、どうしていいか、教えてよ……)


青が浮かぶ。
あの人の瞳。
あのまっすぐな光。


(先生……)

(どうしたら、よかったんだろ)


その青が、遠ざかっていく。
二度と届かないところまで。
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