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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第8章 「この夜だけは、嘘をついて」


「……査問会で、証明します」



喉の奥が焼けるようだった。
けれど、それでも言葉を紡ぐ。



「私の力が、危険じゃないって……
 “呪術師として、生きていい存在だ”って……ちゃんと、見せてきます」



それができたなら――
先生に、これ以上負担をかける理由も、
誰かに“消えろ”なんて言われる理由も、きっと……なくなるから。


の声は小さかったが、まっすぐだった。
テーブルの影で握りしめた指が、わずかに震えていた。


だが、深雪はそっと視線を伏せたまま、囁くように口を開いた。



「……残酷なことを言うようだけど」



カップの中で揺れる紅茶が、まるで何かを予見するように影を落とす。



「どんなに必死に足掻いてもね……“許されない存在”って決まってるの。
それが、あの人たちのやり方だから」



の喉が、ごくりと鳴った。
深雪は、ゆっくりと続ける。



「悟も……きっと、それをわかってる。
 だから、あなたを……無茶な方法で守ろうとするはず」



――その瞬間、脳裏に焼き付いた声が、甦った。


『最悪、僕が上の連中まとめて皆殺しにするから』


いつかの夜、無邪気な笑みに混ざって落とされた言葉。
冗談めいていたのに、なぜだか――ひどく本気に聞こえた。


(そんなこと……させたくない)


喉の奥が熱くなり、拳を握りしめる。
先生が私のために、そんなものを背負う未来だけは――
どうしても……それだけは、嫌だった。


沈黙が落ちる。
胸の中で、言葉にならない気持ちだけが渦を巻く。


ふと、脳裏に浮かぶ。

訓練の帰り道、ふざけて笑ったあの顔。
「頑張ったね」と、頭を撫でてくれた手の温度。


(……消えるなんて、そんなの、できるわけないよ)

(だって私、もっと……あの人と、一緒にいたいのに)

(でも、先生には笑っててほしい)


視界が滲む。
心のどこかが、きゅうっと締めつけられるようだった。


それでも、口にしなければならなかった。
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