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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第8章 「この夜だけは、嘘をついて」


白を基調とした、静かなカフェ。
窓から射す光がテーブルに淡く滲んでおり、遠くで小さくカップを置く音がする。


窓際の席で、と深雪はケーキ皿を前に向かい合っていた。



「ここの抹茶モンブラン、絶品でしょ?」

「……ほんとだ。濃厚そうなのに、口当たりは軽いですね」



は一口食べ、舌に残るほろ苦さと甘さの余韻を確かめる。




「ふふ、でしょ? 京都にもお店があってね、私のおすすめなの」



深雪はフォークでケーキをつつき、
そして、ふと何かを思い出したように笑った。



「悟も、ここのケーキ好きなんだよ」



の胸が小さく波立つ。
それを隠すように視線を落とし、唇をきゅっと結んだあと、少し遅れて微笑む。



「……そうなんですね。知らなかった、です」

「悟は苺のケーキが一番好きなんだけど……私が京都のお店に連れて行ったら、ショーケースのモンブラン、全部平らげちゃって」



深雪はくすっと笑い、フォークでクリームをすくう。
光が窓から差し込み、その笑顔の輪郭をやわらかく縁取っていた。


は、その笑顔を見つめながら思う。


――深雪さんは、私の知らない先生を知っている。
先生が苺のケーキが好きなことも、好きなお店も。
私、先生のこと……何も知らない。


氷をストローでそっと回すと、淡い音がカップの中で溶けていった。
顔を上げると、深雪の視線がまっすぐにこちらを捉えている。



「……な、何かついてますか?」

「ううん」



深雪は首を横に振り、ふわりと笑った。



「ちゃん、まつ毛長くて……肌も白くて、ツヤツヤ。若いっていいなぁ」



は曖昧に笑ったが、その笑顔はすぐに解けた。
だがすぐに、深雪の声色がわずかに沈む。



「……上層部も酷いよね。こんな若くて可愛い、将来のある子を処刑だなんて」



深雪は手元の皿に視線を落とし、ケーキを小さく崩す。
フォークの先で、同じ場所を何度もなぞる仕草が続く。



「悟が必死になるのも……わかるな」



ふいに、深雪が視線を上げる。



「――ねえ、ちゃん。悟のこと、好き?」

「……っ」



カップに伸ばしかけていた指が止まる。
は、瞬間、息を詰めた。
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