第8章 「この夜だけは、嘘をついて」
勢いのある呼び声に、はっと振り向く。
視線の先には、虎杖・伏黒・野薔薇が見えた。
三人は息を荒げながら駆け寄り、反射的にの周りへ立ち位置を固める。
「みんな……どうして?」
問いかけると、野薔薇が息を整えもせずに睨むような目を向けた。
「あんたが攫われたっていうのに、寝られるわけないじゃない」
「そうそう。みんなで起きて待ってたんだ」虎杖が笑顔で続ける。
伏黒は少し視線を逸らしながらも、「……無事でよかった」と短く言った。
は三人の顔を順に見て、胸がじんわりと熱くなるのを感じた。思わず、瞳のふちがかすかに潤む。
「……みんな……心配かけてごめんね」
野薔薇は一瞬だけ口ごもり、すぐにそっぽを向く。
「し、心配なんかしてないわよ。ただ、あんたのせいで夜更かししたの。明日の肌に響いたら責任取りなさい」
「そんなこといって、釘崎が一番落ち着いてなかったくせに」
虎杖がにやっと笑う。
「……は?」
乾いた音と共に、野薔薇の拳が虎杖の頭に直撃し、
虎杖が頭を押さえてしゃがみ込んだ。
その様子を、伏黒が小さくため息をつきながら見ている。
そこへ五条が、手をひらひらと振って促す。
「はいはい〜、もう遅いから解散。寝る子は育つってね」
「はーい」「先生、おやすみ〜」
それぞれ口々に返事をして、部屋へと歩き出す。
野薔薇と並んで歩いていたは、ようやく張りつめた緊張が解けていくのを感じていた。
だが、ふいに野薔薇が声を潜める。