第1章 平穏が終わった日
「私にどうしろって言うの。てかご飯食べたいんだけどもう終わりでいい?」
「あかん、アカンて、俺ら頼まれとんねんあんたを引き抜いてこいって」
「断固拒否いたします〜」
「本人に直接言うてほしい!!」
「代行お願いいたします〜」
「なあ頼むってぇこのとおりやぁ〜!!!」
私の足に縋りつかんばかりに侑くんが這い寄ってきたので気持ち悪さに思いきり避けた。軽く机にぶつかったので若干申し訳なく思うけど、まあ自業自得。もし抱きつかれでもしたら本当に私に明日の朝はおとずれないだろう。
「片割れがアホですまん」
「ネジ巻き直しといてよ治くん」
「ネジなぁどっか行ってん」
「じゃあ仕方ないか」
収集がつかず、どうしたもんかと首を傾げる。
だって話したことないのに、ほぼ初対面で「ごめんなさい」って言いに行くの痛すぎない?事情を知らない人に目撃されたら絶対勘違いされるよ、二年の女子が男バレ主将の告白を断ったとか。しかも特定なんてすぐだよ校内のネットワーク舐めちゃダメ。
「そもそもきっかけは何?それ知らないのに断りに行くなんてできないよ。了承はもちろんできないし」
「せやから、それは……あれ、何やったっけ」
「うそ、何で知らないの」
「俺も詳しくは聞かなかった」
「そこは聞いてよ」
「だって元々は侑と治の二人でくるはずだったし」
「すまん」
「俺も知らん〜北さんの圧やばくてなんも耳に入ってこんかった…」
「自分で言っちゃってるし。え、じゃあ誰も知らないの?何のために来たの、ねえ、まじで帰って」
あまりのだらし無さに後ずさりつつ顔を顰める。こやつら良いのは顔だけか?しっかりした人いないの?
もう嫌。
意味わからなすぎて耐えらんない。
「まじで、帰って。用は済んだでしょ?よく知らないけど主将さんには断り入れといて」
「あ、待って、ちょお待って、銀なら知っとるかも」
「あ、せやな!先週のあん時北さんのそばにおったわ!」
「呼ぶ?」
「呼んでくれ」
銀って誰だ、また人増えるのか。
まあ、あやふやなのもスッキリしないし。仕方ない、待つことにしよう。
寛大な心をもつ私に感謝したまえ男バレ諸君。見返りは一人一本ずつのジュースかお菓子を供えよ。
弁当が置いてある机へ振り返り、友達に私の弁当の蓋を閉じるように伝えた。
ごめんね私の弁当、あとで一気食いするね。
