第1章 平穏が終わった日
まあこの四人の中でも銀島くんはいいとしよう。
弁当のおかずを勝手に盗っていかないし、「いっつも邪魔してすまんなー!」ってニコニコ笑顔でお菓子をくれたりジュース奢ってくれたりするし。
「あんたたち何でわざわざ遠いこっちの教室まで来るの。みんな同クラか隣なんでしょ?」
何度となく疑問に思ったことを口にしてみても、私の弁当のおかずを隙あらば狙っている三人は平然とした顔で口先だけで嘘を吐く。
「角名が行こうって言うから」
「サムが居らんと飯食えへんから」
「双子がいるとなんか面白いこと起きそうだから」
「へぇフーン、本心は?」
「「「女子(喧しブタ)が寄って来ない」」」
この三人狙いのリアコ女子が聞いたら下唇を噛みそうな発言だ。
だがしかし、こやつらは分かっているのだろうか。
女子が寄って来ないからと私の元へ通う彼らの背後から、嫉妬に狂ったリアコ女子の矛先が私を狙っているということを。
理解しておいでですか?
「俺は付き添いな!誰も居らんと寂しいし」
「銀島くんいい子すぎるからお菓子あげるね」
「え、ありがとぉ!」
「なんやそれ俺も欲しい」
「治くんはいい子じゃないからあげない」
「俺今からいい子になるわ。邪魔せんといてなお前ら」
「無理やろアホか」
「残念ながら手遅れかなー」
「侑とDNAが同じ時点で詰んでるよね」
「あ、これうまー!」
「でしょ、もっとあげるよ銀島くん」
「ずるい…」としょんぼりしてしまった治くんが子犬に見えてしまい、仕方なしにお菓子をあげた。半分に割って。それでも喜ぶのだから複雑この上ない。
── まあ、リアコ女子の矛先が私に向いているからと言って、イジメを受けているとか呼び出されるとか、そういう類の事件は起きていないのでまだいい。前方後方左右斜め全方位からの視線が痛いだけで。別に。
だって目的が違うから。
彼らは別に、私のことを恋愛対象として会いたくて来てるわけじゃないと知っているから。
私自身、特に怯える必要がないのだ。
彼らから妙な接触はあれど、すべて“アレ”に関しての接触であって他意はないから、彼女らも私自身もどうすることもできない。ただ嫉妬しているだけ。距離が近いから。
あっち行け離れてと、何度も言っているのだけど。
言うことを聞かないその訳、それを話すには一ヶ月ほど前に遡らなければならない。
