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【HQ】稲高女バレマネージャー争奪戦

第2章 “ちゃんと”した子




「にしても、そっかぁ。主将さんそんなに私のこと気に入ってくれたんだ」
「おう!せやから、男バレに来てくれんかな〜って勧誘頼まれてん。幸村さんどう?女バレから転部!」
「遠慮させていただきます」
「ははっ即答!」


「でも諦めへんよ」とニヤリ笑みを浮かべる銀島くん。
勧誘の仕方は侑くんと正反対で冷静さがあり、断りにくさが滲み出ている。
でも私は女子バレー部のマネージャー。稲荷崎に来る前からそうだったし、転部する気は微塵もないのだ。


「体験入部だけでもどうやろ?」
「いやぁ……ていうか銀島くん、誘い方が侑くんより秀逸すぎるんだけど」
「え、そおか?なんや嬉しいなぁ」
「片割れがアホですまん」
「おッ前それ何回言うねん3回目やぞ!」
「数えてんなやキッショ」
「そろそろ昼休み終わりそうだし俺は戻るね」
「一人だけ帰ろうとすんなや!」
「弁当残ってるし私も戻るね。引き抜きは断固拒否ってことで、じゃ」


片手を上げて、角名くんと同時にそそくさと去ろうとするけど侑くんに腕を掴まれた。
痛い痛い女子からの視線が痛い!


「ちょおおおい待てお前!俺がどないなってもええんか!?」
「知ったこっちゃないっス、てか触んないで私が死ぬぞ?」
「なんでお前が死ぬんおかしいやろ、俺が人生終了や!」
「刺されるんだよ聞き分けて!」
「意味わからんこと言うな!」
「私は!女バレのマネージャーです!!引退するその日まで!!!」


腹の底から叫んだ。
ビリビリと空気が揺れたような、…ないような気がする。
廊下に地味〜に集まってきていた野次馬たちが顔を引き攣らせているのを見て、勝った、と思った。
認知された。もう心配いらないはず、だって私は本気で引退する日まで女バレにいる気でいるから。
心の中で、スポットライトを浴びながら片手を天に掲げる。

勝者は、私!


「はー!埒あかんわ。放課後また来たるからな、待っとけよ絶対北さんとこ連れてったるからな!!」


勝利を確信したのは、ほんの数秒だけ。
あ然とする私を指差して爆弾投下しながら去っていく侑くんの、女子に大人気の顔面に一発拳を入れたかったけど我慢した私は偉いと思う。





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