第1章 告白されましたが、信じますか?
「えっ?!番を解消したい………ですか?」
私は純日本人の、コレまた珍しい女性のΩであるが、体質にそこまで悩まされず、ご縁があり、祖国から遠く離れたドイツで、ドイツの有数のサッカーチームのマネージャーとして、中々に順風満帆な人生を過ごしていた。
そんな私に、夫であり番である。ドイツの青薔薇皇帝と名高いミヒャエル・カイザーは突然、番解除を言い渡した。
夫婦仲が冷めきっていた訳でも、数日前から喧嘩をした訳でもない。何の前触れもなく、言われた。とりあえず
「私……何か、した?」
とりあえず、身に覚えはないが許容出来ない位の失態をしたのか、此方に落ち度があるのか位、はっきりさせておきたい
「いや、お前に非はない。」
「そっか、なら一安心」
そう言って相手が話すのを待つ。理由を言った所で納得できる訳では無い。が、相手はαで、私はΩ。決定権は常に相手にある。それこそ何も言わないで番解除だってありえる。
それでも彼は『したい』と言って、私に了承を得ようとした。それを尊重してくれたととらえて良いのか、言質を取ろうとしているのか。私には判断がつかないが。
じぃ〜っと辛抱強く、相手が話すのを待っていると
「運命の……番……を見つ…けた」
まぁ、こんな事だろうと予想はしていた。
「お前にはすまないと思っている。でも」
「……いいよ」
カイザーの言葉を遮る。そのまま、男の横を通り抜け、自身の私物をスーツケースやら鞄に詰め込む。あんまり入りそうにないから、仕事着とか昔からの愛用品とか必要な物だけにしよう。そう決めると不思議な事に夫から貰ったものや揃いで買った物は全部除外されていて、ほとほと趣味やら実用向きじゃなかったんだなぁと、少し笑えた。
「……怒らないのか?」戸惑ったような声が背後から聞こえる。
「怒った所で気持ちは変わらないんでしょ?なら何言っても無駄」
最低限のものとはいえ、スーツケースとボストンバッグ一つずつは重いなぁなんて思いながら。
「それじゃあお幸せに、離婚届やら必要欄書いたら送るから出すのは任せるね」
我ながら少し嫌味っぽくなったかなと思いながら、颯爽と出ていく。
此方に向かって手を伸ばしているようにも見えたが、気にする余裕も義理もなかった。