第1章 告白されましたが、信じますか?
「だったら俺の番にならない?」
突拍子も無くそう告げられ、キョトンとする女。
「ゲスナー……」
目を数度瞬かせた後、幼子に言い聞かせるような柔らかな声で名前を呼ばれ。
「今まで何人にその言葉を言った?」
優しい口調でそう尋ねる。
「番契約は片手で足りる程度だぞ。毎度振られるけど」
「だろうね」
冗談だと思われてるらしい。
「わりと本気だぜ?お前はクズ女達と違って利口だし、気心知れてるし、カイザーに一泡吹かせられるし、何より、俺の運命の番だ。」
「…………ナンパするのによく言ってそうな言葉だね」
「……うぐっ!?心外だ、遊びでそこまで言わねーよ、気色わりぃ」
女は少し息を吐くと
「まぁ、運命の番だというのは信じるよ。最初会った時に、いい匂いだなぁ、誰だろ?って君見つけた時は、お互い絶望したけど」
片方はガキ臭い色気の一切ない異性ということに。
もう片方は見るからにガラの悪い女癖の悪そうな異性ということに。
初対面で握手をし互いにあまり関わらない事に意見が一致し、幸いな事に今日までヒートやラットに苦しめられる事なく、ゲスナーはセフレ達と、女は番と、円満に過ごしていたのだ。
「それに、いくら運命の番だからって、番でないとはいえ、今まで散々一緒に過ごしてきたセフレさん達と切れるの?」
「達って…そんな複数、いるわけ…」
「何人?」
じぃ〜っとみつめられ、目線から逃れるようにそらし、人数分指を立てて見せる。
「クスクス、君、意外と素直だよね?気持ちだけもらっておくよ。第一、ミヒャ…カイザーに解消されて、すぐ君に乗り換えるような人間。信用できる?」
「まぁ、どんなアバズレか、って、なるわな」
「その言葉、そっくり君に返すよ?下衆ナー、良き友人としては見えるけど、番にするには信用に足りないよ。それに、番だから他の人と関係持たないでって言われるの嫌でしょ?君」
「君にとって、俺どんだけ、下種野郎なの?まぁ、そうだけど」
それでも、運命の番なのだ。他の人などいらないと思える日が来る。そんな予感がする。
そう言いたかったが、番を解消されて、弱ってる彼女に告げるのは躊躇われ、真夜中の公園で二人、他愛の無い話をしていた。