第2章 副隊長、触らないでください
歩いているといきなり腰を抱かれて、耳元で好きやと囁かれた。
「いっ…ははっ、ごめんて。」
「すみません!今、爪当たりましたよね?」
すぐに耳を隠そうと手を伸ばしたら彼の顔に当たった気がして、痛そうな声も漏らしたので、すぐに彼の顔を見た。
両手で頬を掴んで傷が出来ていないかじっと見る。
大丈夫やと言ってくれるが、この顔に傷をつけてしまったら…と思い必死に探す。
どこに当たったんだろう…。
するとだんだんと赤くなっていくところを見つけ軽く指で拭うと滲んだ。
血が出てる…。
ちゃんと爪は切ってたはずなんだけど…。
「すみません、血が…。」
「ええて、大丈夫やから…僕が悪いんやし。それより…そない見つめられると、ちゅーしたなってまう。」
「どうしよう…こんなかっこいい顔に傷つけちゃった……っ!私、何も言ってませんからね!?」
なんや、複雑やと呟く彼を無視し鞄の中からウェットティッシュを取り出して、頬を拭いていく。
「かっこいい言われたんは嬉しいんやけど、ちゅーしたい言うたんは無視されてもうた…。」
「だから私、何も言ってませんってば!」
されるがままになっている彼の頬をじっと見つめながら、血が出なくなるまで拭いた。
ちゅーしたいは無視なんかと頬がむくれていく。
血が出なくなったのを確認して絆創膏を貼った。
鞄の中に入っててよかった…。
そのまま頬に一瞬だけ口付けて顔を見ずに手を握って家に急ぐ。
顔、あっつい…。
「ははっ、あはははっ!やっばい、めっちゃ嬉しい!ちゅーして手まで繋いでくれるん?可愛ええなあ、好きや!」
こんなとこであまり言わないで欲しい…。
そして私はなんで、こんなとこであんなことをしたんだ。