第6章 穢れた血、幽かな声
チユは、スリザリンの選手たちを見つめながら、ハリーの背中と交互に視線を送り、どこか緊張感を感じていた。
スタンドの空気が、少しぴりっとしたような気がした。
「何が起こるんだろう…」と心の中でつぶやきながら、チユはロンとハーマイオニーと一緒にスタンドを下り、ピッチへと歩き出した。
「おい、見ろよ。ピッチ乱入だ」
スリザリンの選手たちが、徐々にピッチの中央に集まり始め、チユたちが近づくと、スリザリンのキャプテン。マーカス・フリントが冷ややかな視線を投げかけてきた。
「どうしたんだい?どうして練習しないんだ?それに、あいつ、こんなところで何してるんだ?」
ロンは、スリザリンのローブを着たマルフォイに目をやりながら言った。
「ウィーズリー、僕はスリザリンの新しいシーカーだ。」
マルフォイが、にやりと不敵に笑いながら答えた。
「僕の父上が、チーム全員に新しい箒を買ってくれたんだ。それをみんなで見て称賛していたところさ。」
ロンは目の前に並べられた7本の高級箒を見て、あんぐりと口を開けた。「う、うわ…すごい…」
「いいだろう?」と、マルフォイは得意げに言った。
「だけど、グリフィンドールチームも資金集めして、新しい箒を買えばいい。クリーンスイープ5号を慈善事業の競売にかければ、博物館が欲しがるだろうよ」
スリザリンチームは大爆笑だ。
「少なくとも、グリフィンドールの選手は、誰1人としてお金で選ばれたりしてないわ。こっちは純粋に才能で選手になったのよ」
ハーマイオニーがきっぱりと言った。
マルフォイの自慢顔がちらりとゆがんだ。
「離もおまえの意見なんか求めてない。生まれそこないの『穢れた血』め」
その言葉が投げつけられた瞬間、空気がぴたりと凍りついた。
チユは思わず、ハーマイオニーの方を見た。
彼女の顔が少し引きつっていた。でも、その瞳は怒りと誇りに燃えている。
「…穢れた、血……?」
その言葉を、チユは頭の中で繰り返した。
自分は――どうなんだろう?
自分は本当に魔法界に生まれたのか、それとも、どこか遠いところから流れ着いたのか。
リーマスはその事について何も触れなかった。
ただ「大切なのは誰であるかだ」とだけ。
心の奥がぐらりと揺れた。
でも、その代わりに――怒りが、せり上がってきた。