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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第6章 穢れた血、幽かな声



空ではハリーが競技場の周りをぐるぐると全速力で飛び回っていた。
その様子は、見ているこちらまで思わず胸がすっとするようだった。


「おーい、お嬢さん方おはようさん!」


どこか陽気な声が頭上から降ってきた。
見上げると、フレッドとジョージがほぼ同時にスタンドへ飛び降りてきた。

2人の顔は、早朝にもかかわらず、いつもどおりいたずらっ子の笑みを浮かべている。



「チユ、お寝坊さんだったかい?」


「……ちょっとだけ。でも、ハリーが頑張ってるなら、私も応援したくて」



チユがそう言うと、フレッドは満足げに頷き、ジョージはチユの頭をぽん、と軽く撫でた。



「でも、頑張ってるのは、何もハリーだけじゃないぞ?」フレッドが言った。「この我ら偉大なる『ウィーズリー・ワンダー・ツインズ』も、日々寝不足と戦いながら」


「そして先生たちの無限の説教と戦いながら」ジョージが割り込む。


「一空を飛んでるってのに!」フレッドが完璧なタイミングで締めくくった。



「ほら見て、あのターンとか完璧だっただろ?」
と、フレッドがわざとらしく腰に手をあててドヤ顔をしてみせる。



「マクゴナガル先生も思わず加点したくなるレベルだ」ジョージが胸を張る。



「うん、ちゃんと見てるから2人も頑張ってね」



チユが微笑むとフレッドとジョージも満足気に笑った。



「よーし!チユ公認!俺たちも応援されてるってことで!今日はいける!」


「パン1個でチャージできる気がしてきた!ちょうだい!」


「だ、だめ!これはハリーのぶんだから…!」



きゅっとパンの包みを抱え直すチユに、双子はまた笑って、ヒュッと身を翻し、箒の元へと戻っていった。


その時、ピッチの向こう側、選手用の出入り口から、スリザリンの選手たちが現れ始めた。
緑と銀のローブが揺れ、1人、また1人とピッチに歩みを進める。
その中には、驚くことにマルフォイも含まれていた。



その手には、ぴかぴかに磨かれた箒がかかっている。



「えっ、もしかしてスリザリンとの合同練習なの……?」



チユが小さく首を傾げると、ロンが顔をしかめた。



「いいや、そんな仲良しこよしに見えるかい?」


「なんだか不味い事になりそう、様子を見に行きましょう」とハーマイオニーが眉をしかめた。
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