第6章 穢れた血、幽かな声
それから2、3日、ハリーはギルデロイ・ロックハートの姿を廊下で見かけるたびに、サッとタペストリーの裏に隠れたり、近くの教室にすべり込んだりして時間を取られっぱなしだったようだ。
けれど、それ以上に手を焼いたのは、コリン・クリービーだった。どうやら彼はハリーの時間割を完全に暗記しているらしく、廊下ですれ違うたびに「ハリー、元気かい?」と声をかけてくる。
その回数、なんと1日に6回7回も。
ハリーがどんなに気まずそうに「やあ、コリン」と返したところで、コリンは夢見心地で、「返事してくれた!」と小躍りしていた。
チユもまた、少しばかりの注目を集めていた。
あの『ピクシー事件』のときにこぼれた青インクで、ローブの肩がほんのりレイブンクロー色に染まってしまったのだ。
「おやおや、レイブンクローに寝返ったか、チユ?」と、フレッドがにやりと笑って言った。
ジョージも「賢さを目指すならまずは本棚から!」と本を山ほど抱えて近づいてくる始末だった。
けれど、翌日、マクゴナガル先生が廊下でチユを見つけると、一言呟くだけで、ローブの青色をすっと元通りの赤に戻してくれた。
これでやっと“寝返り疑惑”から解放されるとチユは胸を撫で下ろした。
一方、ロンの杖は相変わらず不調で、金曜日の『呪文学』の授業中、とうとうブチンという音を立てて手からすっぽ抜け、空中をふらふら飛んだかと思うと、フリットウィック先生の眉間にゴチン。
「あうっ……」
先生の小さな額には、みるみるうちにずきずきと脈打つ緑色のこぶが出来てしまった。
そんなこんなで、ドタバタ続きの1週間。チユはようやく訪れた週末に、ふぅっと長いため息をついた。