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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第5章 ギルデロイ・ロックハート




昼休みのベルが鳴ると同時に、教室のあちこちから安堵のため息が漏れた。

チユもその1人だった。

背もたれにぐったりともたれかかって、うんと息を吐く。

(脳みそが、絞ったスポンジみたい……)


マクゴナガル先生の授業はいつも緊張感がすごいけど、今日は特にピリピリしていた。
チユはいつも通り成功したけれど、ずっと教室の空気に飲まれっぱなしで、体がこわばっていたのだ。


みんながぞろぞろと教室を出ていく中、ハリーとロンだけは席を立たずに残っていた。

チユはそれをちらりと見て立ち止まった。


「……こいつめ……役立たず……コンチキショー……!」


ロンが、例の壊れた杖――いや、もはや”杖”と呼ばれているそれ――を机にバンバンと叩きつけている。


その姿に、ちょっとだけ笑いそうになったけれど、ロンの顔が思いのほか真剣だったので、笑いかけた口元をすぐに引き締めた。



「家に手紙書いて、新しいの送ってもらえば?」と、ハリーがあきらめ半分で言った。


チユもこっそり頷く。さすがに、あの杖じゃ授業どころじゃない。


「そしたらまた“吠えメール”が来るさ。『折れたのはお前のせいでしょう〜!』って……」


ロンは呪われたような声で言い、今度はシューシューと音を立て始めた杖を鞄に無理やり押し込んだ。



「……ねえ、作ってあげようか?」
ぽつりと、思わず口に出していた。


「えっ!?」

ハリーとロンが同時に驚いた声を上げる。チユの顔を、揃ってまじまじと見つめた。


「……作るって、杖を?」と、ハリー。

「枝があれば……たぶん、すぐできると思うよ」チユは肩をすくめながら言った。

「ええ!?ちょ、待って! もしかして……チユの杖って、自分で作ったの!?」
ロンが口をぱくぱくさせながら問い返した。


「うん、そうだよ」
チユは何でもないことのように頷いた。


だって、本当にそうなのだ。

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