第5章 ギルデロイ・ロックハート
昼休みのベルが鳴ると同時に、教室のあちこちから安堵のため息が漏れた。
チユもその1人だった。
背もたれにぐったりともたれかかって、うんと息を吐く。
(脳みそが、絞ったスポンジみたい……)
マクゴナガル先生の授業はいつも緊張感がすごいけど、今日は特にピリピリしていた。
チユはいつも通り成功したけれど、ずっと教室の空気に飲まれっぱなしで、体がこわばっていたのだ。
みんながぞろぞろと教室を出ていく中、ハリーとロンだけは席を立たずに残っていた。
チユはそれをちらりと見て立ち止まった。
「……こいつめ……役立たず……コンチキショー……!」
ロンが、例の壊れた杖――いや、もはや”杖”と呼ばれているそれ――を机にバンバンと叩きつけている。
その姿に、ちょっとだけ笑いそうになったけれど、ロンの顔が思いのほか真剣だったので、笑いかけた口元をすぐに引き締めた。
「家に手紙書いて、新しいの送ってもらえば?」と、ハリーがあきらめ半分で言った。
チユもこっそり頷く。さすがに、あの杖じゃ授業どころじゃない。
「そしたらまた“吠えメール”が来るさ。『折れたのはお前のせいでしょう〜!』って……」
ロンは呪われたような声で言い、今度はシューシューと音を立て始めた杖を鞄に無理やり押し込んだ。
「……ねえ、作ってあげようか?」
ぽつりと、思わず口に出していた。
「えっ!?」
ハリーとロンが同時に驚いた声を上げる。チユの顔を、揃ってまじまじと見つめた。
「……作るって、杖を?」と、ハリー。
「枝があれば……たぶん、すぐできると思うよ」チユは肩をすくめながら言った。
「ええ!?ちょ、待って! もしかして……チユの杖って、自分で作ったの!?」
ロンが口をぱくぱくさせながら問い返した。
「うん、そうだよ」
チユは何でもないことのように頷いた。
だって、本当にそうなのだ。