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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第5章 ギルデロイ・ロックハート



それからはあまり話すチャンスがなくなった。
耳当てをつけたし、マンドレイクに集中しなければならなかったからだ。


チユは鉢に手を伸ばす。マンドレイクの葉をぐっとつかんで、引き抜こうとした瞬間――


「んぎゃああああああ!」

「ひいっ……!また泣いてる!」


マンドレイクが暴れ出した拍子に、チユの手からすぽっと抜けて、泥だらけの鉢のふちに落ちる。
必死で押さえ込もうとするが、赤ん坊の姿をしたそれは、四肢をばたばたと振り回して言うことを聞いてくれない。


「誰か代わってーーーっ!」


叫んでも、耳当てのせいで誰にも聞こえていない。


ハリーは向こうで太ったマンドレイクを汗だくで押し込んでいて、助けてくれそうにない。

結局チユは、マンドレイクとちっちゃな格闘を繰り広げながら、泥まみれで作業を終えた。

植え替えを終えたときには、手もローブの袖口もどろどろだった。


温室を出る頃には、みんなぐったり。
ハリーもロンも、そしてハーマイオニーさえも、あまり口をきかずに城への道をとぼとぼ歩いていた。

仲間たちと共に、手早く浮泥を洗い流すと、急いで次の授業――変身術の教室へと向かった。


マクゴナガル先生のクラスはいつだって気が抜けないけれど、今日は特にその厳しさが際立っていた。


「昨年度の知識が抜け落ちているようでは、お話になりませんよ、ミスター・ポッター」


冷たい声が教室の空気をきりりと引き締める。チユは思わず背筋を伸ばした。


今日の課題は、「コガネムシをボタンに変える」というもの。


だが、ハリーのコガネムシは何かを察知したかのように、彼の杖先をひらりとかわして、机の上を元気に駆け回っている。

チユはつい口元を押さえて笑いそうになった。


「がんばって!」と小さくエールを送ると、ハリーは苦笑いで肩をすくめた。


一方のロンは、さらに悲惨だった。
彼の杖は、スペロテープで修理されている。

見るからに危なっかしいのだが、当の本人は強引に使い続けている。
というより使うしかないらしい……


「いっちょいくぞ…!」


ロンが気合いを入れた次の瞬間――

バチッ!

激しい音とともに、杖の先端から煙が噴き出し、ロンの顔を濃い紫色のもやが包み込んだ。
教室には、むっとする腐った卵のような匂いが漂い、近くの生徒たちが一斉に顔をしかめた。
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