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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第1章 満ちる月、満ちない気持ち



「ああ、そうだよ。チユ。君は選ばれたんだ」


だが、少女はうつむき、手紙を胸に抱えながら、ぽつりとつぶやいた。


「……無理だよ。私なんか……呪われてるもの」


リーマスの眉がわずかに動いた。


「呪い、って……?」


チユは答えず、ゆっくりと背を向けた。
そして、ためらいがちに、ワンピースの背を下ろした。


その背中には、漆黒の羽が生えていた。


羽は鳥のように整ってもいなければ、妖精のように繊細でも、天使のように神々しくもない。
不規則で、禍々しく、まるで闇そのものを背負っているかのようだった。


リーマスは何も言わなかった。ただ、深く理解するように、彼女の背を見つめた。


(……ああ、そうか。そういうことだったのか)


誰かに恐れられ、拒絶され、そして自らもその“異質さ”を呪いと呼ぶようになった。
彼女は、1人ぼっちで、それでも必死に生きてきたのだ。


リーマスは心の中で小さく呟いた。



――まるで、自分の子どもの頃みたいだな。



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