• テキストサイズ

ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第5章 ギルデロイ・ロックハート




マクゴナガル先生がグリフィンドールのテーブルを回って、時間割を手渡しはじめた。

チユの手元にも、1枚の羊皮紙が届く。


「ふむふむ……最初は薬草学。ハッフルパフと一緒なんだ……」


そう呟いて紙をたたみ、チユは隣に座るハリーたちを見上げた。


「じゃあ、行こっか」


ハリー、ロン、ハーマイオニーと並んで大広間を出ようとしたそのときだった。


城の前庭を横切る途中、ふと目に飛び込んできたのは、ひときわ目立つ長身の生徒だった。

整った顔立ちに、長い黒髪。
風に揺れる前髪の奥から、鋭い眼差しが一瞬、覗く。


――ゼロ・グレイン。


スリザリンのような雰囲気を纏いながらも、彼はれっきとしたグリフィンドール生だ。


堂々とした立ち姿、春先よりさらに伸びた背は、どこか手が届かないような美しさをまとっていた。


「ごめん、先に行ってて!」


チユはそう言ってハリーたちに手を振ると、弾かれたように駆け出した。

ハリーが何か言いかけたようだったが、彼女の弾むような笑顔に、言葉を飲み込んで苦笑した。

「ありゃ、相当惚れてるな……」ロンが小声で呟いた。


「ゼロ……!」


名前を呼ぶと、ゼロは歩みを止め、ゆっくりとチユの方を振り向いた。


「久しぶり、チユ」

「久しぶり、温室まで一緒に行こうよ」

「いいの?その……ポッターたちとじゃなくて」

「ハリーたちとは、またあとで!」



そう言って笑うチユに、ゼロも口元をわずかに緩めた。
2人は並んで歩き出す。野菜畑の端を抜け、温室のある場所へと向かう細道には、朝の光が穏やかに差し込んでいた。


「昨日、新入生に、スリザリンの寮の場所を聞かれたよ」


ゼロがぽつりと呟いた。


「本当に?」チユは思わず吹き出しそうになった。

「ローブ見てなかったのかな。真面目に『あっちですか?』って聞かれて……こっちは戸惑ったよ」

「ゼロって完全に“スリザリン顔”だもんね」


「それ、褒めてる?」

「んー……うん!」


2人は笑い合いながら、さらに歩を進めた。
/ 300ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp