第5章 ギルデロイ・ロックハート
チユも孤児院ではよくグリス院長に怒られていたが、あれほどの迫力はなかった。
しかし、グリス院長とは違い、モリーおばさんの叱りには愛がある。
その違いは、どこか心に響くものがあった。
ハリーは、呆然と椅子に座り込んでいた。
ロンもまた、動けないようにその場に座り込んでいる。
周りでは数人がくすくすと笑い、少しずつ話し声が戻っていった。
ハーマイオニーは本を閉じ、ロンの頭を見下ろして静かに言った。
「ま、あなたが何を予想していたかは知りませんけど、ロン、あなたは……」
ロンはすぐに反応した。「当然の報いを受けたって言いたいんだろ!」
チユは食べかけのオートミールをそのまま押しやりながら、目の前のロンの姿をぼんやりと見つめていた。
彼の苦しみは、まるで自分のことのように感じられる。
自分の立場に置き換えてみれば、あんなに注目される事がどれほど恥ずかしいことか、少しだけ分かる気がした。
「ウィーズリーおじさんが役所で尋問を受けた……」
ハリーが呟いた。
その言葉が、チユの心をしんと静かに打った。
あんなに親切にしてくれたアーサーおじさんが、こんなことで困っているなんて……。
その思いは胸に広がり、少し重くなった。だが、彼女はすぐに顔を上げて、小さな声で呟いた。
「アーサーおじさんなら、きっと大丈夫だよ」チユは軽く微笑んで、ロンの肩をポンと叩いた。「今までだって色んな言い訳をしてきただろうし」
「でも……」ロンは戸惑いながら言った。「でも、あんなに母さんに怒られるなんてさ」
「怒られるのも、きっと愛があるからだよ」チユはにっこりと笑った。「誰かにこんなに心配に思ってもらえるのって、すごく幸せなことだと思う」
チユにとって、家族の温かさを実感できる瞬間がどれほど貴重なものか、ロンにはわからないかもしれない。
それでも、今、彼女にはリーマスという大切な家族がいる。それが何よりの支えになっている。
ロンは少しだけ表情が和らいだ。
チユの言葉に、無邪気な明るさがあって、なんだか元気が湧いてくるような気がした。
「ありがとう、チユ……」ロンは照れくさそうにそう言った。
チユは嬉しそうにうなずき、温かい気持ちを胸に抱えたまま彼を見守った。