第5章 ギルデロイ・ロックハート
「おはよう、ネビル。今日も元気そうだね」
チユは、ネビルに微笑みかけながら言った。
彼は少し照れくさそうに、でも元気に答えた。
「もうフクロウ郵便の届く時間だ! ばあちゃんが、僕の忘れたものをいくつか送ってくれると思うよ!」
その時、まさに噂をすればで、突然、頭上から大きな音が響いた。
何羽ものふくろうが大広間に飛び込んでくる。
バタバタと羽音が鳴り響き、慌ただしい音の中で、手紙や小包が次々と生徒たちの頭上に降り注いだ。チユは思わず身を縮めた。
「エロール!」
ロンが叫んだその瞬間、大きな小包がネビルの頭に落ち、彼の丸顔を直撃した。
笑い声とともにみんながそれを見ていたが、チユの心はどこか別の場所にいるようだった。
目の前の光景が、何だか遠く感じられて、耳の奥が鈍く響く。
「大変だ!!」
「大丈夫よ。まだ生きてるわ」
ハーマイオニーはエロールを指で軽くつついて、ほっとした様子で言った。
けれど、ロンはもう冷や汗をかきながら、赤い封筒をじっと見つめている。
「大丈夫じゃないよ、あれは……」
ロンが顔をしかめて言った。
「ママが――ママったら『吠えメール』を僕に送ってきたんだよ」
その言葉を聞いて、チユは少し身を乗り出した。何だか、様子がただ事じゃないような気がして、胸がどきりとした。
(『吠えメール』って、なんだろう……?)
チユは心の中で疑問を抱えながらも、目の前の封筒が不安を煽るように思えた。
ロンの顔がますます青ざめていくのを見て、無意識に体が硬直する。
「どうしたの?」ハリーが尋ねると、ロンは答えず、ただただ赤い封筒に集中していた。
「開けないともっと酷いことになるよ。僕のばあちゃんが送ってきたことがあって、ほおっておいたら――」ネビルが震える声で言った。
ハリーの目が、ロンたちの顔に向けられ、そして次に赤い封筒に注がれた。
封筒から煙が立ち始めるのを見て、チユは不安そうに目を細めた。
「開けて」ネビルがせかした。「ほんの数分で終わるから…」
ロンは震える手で封筒を開けた。
瞬間、ネビルが耳に指を突っ込んだ。
チユも反射的に耳を押さえようとしたが、次の瞬間、広間全体に響き渡るような吠える声が聞こえ、まるで封筒が爆発したかのように、天井からほこりが舞い落ちてきた。