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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第4章 欠けたはじまり



晩餐が終わり、大広間のざわめきが少しずつ静かになっていくころ。
チユたちは生徒たちの列に混ざって、グリフィンドール塔へと向かっていた。

長い階段を上ると、懐かしい絵画たちがあちこちから話しかけてくる。

そして、談話室前に差しかかると――


「えーと……」
聞き覚えのある声がした。

「合言葉がわかんないよ……」
ロンの不満げな声も聞こえる。


「ハリー!ロン!」

チユが駆け寄ろうとしたその瞬間、背後から勢いよく、ハーマイオニーが2人に向かって突進するように飛び込んだ。


「やっと見つけた!いったいどこに行ってたの?バカバカしい噂が流れてたのよ、誰かが言ってたわ。あなたたちが空飛ぶ車でホグワーツに来て、退学処分になったって!」


ハリーとロンはぎょっとして顔を見合わせた。


「ああ……退学処分にはならなかったよ」
ハリーが慌てて言うと、


「まさか、本当に空を飛んで来たの……?」
ハーマイオニーの声はまるでマクゴナガル先生のように厳しく、目もつり上がっている。


「お説教はやめてくれよ……」
ロンが疲れきった声で返した。

「とにかく、合言葉教えてくれよ」

「『ニミレミツスイ』よ。でも話をそらさないでよね!」


ハーマイオニーが呆れ顔で扉の前に立ち、肖像画に合言葉を伝えると、肖像画がくるりと開いた。

扉の奥には、暖炉の火が燃える懐かしい談話室の光があった。


チユはようやく心からほっとして、ハリーとロンの顔を見つめた。


「よかった……無事で」
思わず出たその声に、ハリーが少しだけはにかんで笑った。


「心配かけたね」


ジョージが、まるで戦士の帰還を迎えるように、ロンの背中をどんと叩いた。


「おおっと皆さん!グリフィンドール史上最も勇敢な勇者、ロン・ウィーズリーの凱旋です!」

「華麗なる新聞デビューを飾った彼の記念切手は明日から発売!」フレッドが片膝をついて深々と頭を下げながら叫んだ。

「特典で『勇者ロンの涙で濡れたハンカチ』付き!」



「やめてよ……」ロンが顔を真っ赤にしてうめくと、みんなの笑い声が談話室にあふれた。
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