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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第4章 欠けたはじまり



それから車内を移動しながら、チユはあたりを見回していた。
ハリーとロンの姿を探しているのに、どのコンパートメントにも見当たらない。


「どこ行っちゃったのかな……」


そんなふうにきょろきょろしていると、前の方からハーマイオニーが手を振りながら近づいてきた。


「チユ! やっと会えたわね!」

「ハーマイオニー!」


再会に思わず笑顔がこぼれる。

夏休みのあいだに手紙のやり取りはしていたけれど、やっぱり顔を見て話すのは嬉しかった。


「ハリーとロンは?一緒じゃなかったの?」

「ううん……さっきから探してるんだけど、まだ見てなくて……」


ハーマイオニーも困ったように眉をひそめる。


「まさか、乗り遅れたんじゃ……そんなはずないと思うけど……」


チユは胸の奥に、ちくりとした不安を覚えた。
あの2人のことだから、何か変なトラブルに巻き込まれていないといいけれど――。


「とにかく、列車がホグワーツに着いたら、先生たちに話しましょう。きっと何かわかるはずよ」


「うん……」


ふと、窓の外を見ると、風景はもうすっかり山の中に変わっていた。
チユはそのまま、静かにハリーたちの無事を祈った。


ホグワーツ特急は、ゆっくりと汽笛を鳴らしながら停車した。
夜の駅には霧が立ち込め、吐く息が白くなる。


チユはハーマイオニーと並んでホームに降り立ったが、やはりハリーとロンの姿はどこにもなかった。



「……やっぱり来てないみたい」



ハーマイオニーが不安そうに言うと、チユも小さく頷いた。


「うん……大丈夫かな……」

「一応、先生たちに伝えた方がいいわね。マクゴナガル先生なら、きっと何か対処してくれるはずよ」


2人で荷物を引きながら、生徒たちの列に並んでホグワーツの馬車に乗り込んだ。空には星が瞬き、湖面が静かに揺れていた。


やがて、ホグワーツの大広間へと辿り着く。
天井のキャンドルがふわりと宙に浮かび、生徒たちのざわめきが新学期の始まりを感じさせていた。


けれど――チユの胸は、まだどこか落ち着かなかった。
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