第4章 欠けたはじまり
それから車内を移動しながら、チユはあたりを見回していた。
ハリーとロンの姿を探しているのに、どのコンパートメントにも見当たらない。
「どこ行っちゃったのかな……」
そんなふうにきょろきょろしていると、前の方からハーマイオニーが手を振りながら近づいてきた。
「チユ! やっと会えたわね!」
「ハーマイオニー!」
再会に思わず笑顔がこぼれる。
夏休みのあいだに手紙のやり取りはしていたけれど、やっぱり顔を見て話すのは嬉しかった。
「ハリーとロンは?一緒じゃなかったの?」
「ううん……さっきから探してるんだけど、まだ見てなくて……」
ハーマイオニーも困ったように眉をひそめる。
「まさか、乗り遅れたんじゃ……そんなはずないと思うけど……」
チユは胸の奥に、ちくりとした不安を覚えた。
あの2人のことだから、何か変なトラブルに巻き込まれていないといいけれど――。
「とにかく、列車がホグワーツに着いたら、先生たちに話しましょう。きっと何かわかるはずよ」
「うん……」
ふと、窓の外を見ると、風景はもうすっかり山の中に変わっていた。
チユはそのまま、静かにハリーたちの無事を祈った。
ホグワーツ特急は、ゆっくりと汽笛を鳴らしながら停車した。
夜の駅には霧が立ち込め、吐く息が白くなる。
チユはハーマイオニーと並んでホームに降り立ったが、やはりハリーとロンの姿はどこにもなかった。
「……やっぱり来てないみたい」
ハーマイオニーが不安そうに言うと、チユも小さく頷いた。
「うん……大丈夫かな……」
「一応、先生たちに伝えた方がいいわね。マクゴナガル先生なら、きっと何か対処してくれるはずよ」
2人で荷物を引きながら、生徒たちの列に並んでホグワーツの馬車に乗り込んだ。空には星が瞬き、湖面が静かに揺れていた。
やがて、ホグワーツの大広間へと辿り着く。
天井のキャンドルがふわりと宙に浮かび、生徒たちのざわめきが新学期の始まりを感じさせていた。
けれど――チユの胸は、まだどこか落ち着かなかった。