第4章 欠けたはじまり
隠れ穴に戻ってからの日々は相変わらずにぎやかで、やさしかった。
ウィーズリー家の子どもたちに囲まれて、チユは笑ったり、叫んだり、ころんだりしながら過ごした。
ロンとハリーと一緒に遊び、ジニーとは夜遅くまでベッドの上でこそこそおしゃべりをした。
そして、日が暮れて夜になると、フレッドとジョージは必ずといっていいほどいたずらで締めくくった。
ある夜、夕食が終わると、フレッドとジョージが妙にそわそわしていた。
「なあ、ジョージ。今夜はちょっと派手にいっとく?」
「もちろん、フレッド。ここはひとつ、夏休みの夜にふさわしい花を咲かせよう」
「ほらチユ、天井見とけよ。絶対びっくりするから!」
そう言ってふたりが取り出したのは『ドクター・フィリバスターの長々花火』
ふたを開けた瞬間、赤や青の星が台所じゅうにばらまかれ、ポーン、ポーンと跳ね回った。
「おおっと、命中注意!ジニー、それは避けろー!」
チユは思わず笑いながら、ジニーと一緒に上を見上げた。
星たちは天井と壁の間を30分も跳ね続け、部屋じゅうがまるで夜空みたいだった。
「ふふ……これ、毎晩だったらいいのに」
「言ったなチユ、それ、立派なリクエストとして受け取ったぞ」
「明日もまた我々の新作仕掛けるとするか」
「やだー!」とジニーが叫び、チユはくすくす笑った。
星がやがて1つ、また1と消えていくと、みんなでマグカップになみなみと注がれた熱いココアを飲み干した。
それから、ほっと息をついて、笑い合って、眠りについた。
でも――心の片隅では、ずっと数を数えていた。
満月が過ぎるその日まで。
会いたいひとの顔を、忘れないように、何度も思い浮かべながら。
そして、ある朝。
台所から聞こえてきたモリーおばさんの「あら、来たのね」という声に、チユはぱっと顔を上げた。心臓が跳ねるように高鳴る。
階段を駆け下りて扉の前に立つと、そこには――
「……リーマス……!」
彼の顔はひどくやつれていた。
肌は青白く、唇に血の気がなく、両手には無数の傷があった。
着ているローブは古びていて、首元のボタンも片方、外れている。
笑っている――けれど、それはとても弱々しい笑顔だった。