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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第3章 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店




けれど、ルシウスはまだジニーの古びた『変身術入門』を手に握ったままだった。
その古本を、まるで汚いものでも扱うように指先でつまみ上げ、ジニーの方に突き出した。


「ほら、チビ嬢ちゃんの本だ。――君の父親にしてみれば、これが精一杯だろうな」


ギラついた目が意地悪く細められる。
ジニーは俯いたまま、何も言わなかった。


「……!」


胸がぎゅっと締め付けられた。悔しい。悔しくて、言葉が出ない。
チユもジニーと同じだった。ずっと、何かを馬鹿にされてきた。

でも――でも、これは違う。


「ジニーの本、そんなふうに扱わないで……!」


声が震えていたけれど、チユは思いきって言った。
そのときルシウスが彼女の方に顔を向けた。

冷たい目。ぞくりと背筋が凍る。

けれど、彼はそれ以上何も言わず、ハグリッドの手を荒っぽく振り払うと、隣に立っていたドラコに一瞥を送り、目で合図する。

そして、2人は何事もなかったかのように、背筋を伸ばして店の外へと出ていった。


「アーサー、あいつのことはもうほっとけ」


ハグリッドはアーサーおじさんのローブの裾を直そうとして、思わず彼の体を吊り上げかけてしまい、あわてて手を緩めた。


「骨の髄まで腐っとる。家族全員がな。みんな知っちょる。マルフォイ家の言うこたぁ聞く価値もねえ。そろって根性がねじ曲がっとる。そうなんだ。さあ、みんな――さっさと出んかい!」


怒りと悔しさで顔を赤くしたモリーおばさんは、無言のまま子どもたちの後ろについた。
グレンジャー夫妻は怖さに震えながらハーマイオニーの腕をしっかりと握りしめていた。


「チユ、立てるか?」


ジョージがそっと手を差し伸べてくれた。チユはうなずいて、その手を取った。



「……さっきは本から庇ってありがとう」

「へへ、騎士として当然のことさ」



少し得意げに笑うジョージの顔が、ホコリまみれだったことに気づいて、チユも小さく笑った。

チユたちは、本とガラスの破片と、それにいくつかの怒鳴り声が混じる混乱の中を抜けて、慌ただしく店の外へと出ていった。

空は青く、まぶしいほどに晴れていたけれど、彼女の胸の中には、冷たい塊のようなものがまだ残っていた。
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