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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第3章 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店


約束の時間になり、チユたちは『フローリシュ・アンド・ブロッツ書店』へと向かった。

けれど、遠くから見えてきたのは――本屋の前に、まるでお祭りのように集まった人だかりだった。


「な、なにごと……?」


チユは思わず足を止め、ハリーとロンの背中越しに首を伸ばした。
書店の入り口には魔女たちがぎっしりと詰めかけ、押し合いへし合い、中に入ろうと必死になっている。ほとんどがモリーおばさんくらいの年齢の女性たちばかりだった。

そして、その上の窓にかかった大きな横断幕を見上げて、チユはようやく理由を理解した。


サイン会
ギルデロイ・ロックハート
自伝『私はマジックだ』
本日午後12時30~4時30分


「本物の彼に会えるわ!」


ハーマイオニーが、目をきらきらさせて叫んだ。チユはびくっとして振り向いた。
普段は理知的で落ち着いたハーマイオニーが、こんなふうに声を上げるなんて。


「だって、彼って、教科書のリストにある本、ほとんど全部書いてるのよ!」


チユはちょっと困ったように笑った。
ロックハートの本は何冊か読んだ事はあるけれど――あの歯の白さがちょっと怖かった。

書店のドアのところには、あきらかに手に負えていない様子の魔法使いが1人、必死に叫んでいた。


「お、奥様が、お静かに願います……押さないでください……本に、お気をつけ願います……!」


チユは、ぎゅうぎゅう詰めの人波を見て、思わずハリーの服の端を握った。胸が少しざわざわする。
まさか、これからこの中に入るの?

ハリーとロンは顔を見合わせて、やれやれといった風に肩をすくめた。どうやら、逃れられそうにないらしい。
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